Do you〜?

プロローグ
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【マッチョとの遭遇】





 なんの変哲もないはずだった春休み。




 オレはちょっとコンビニまでアイスを買いに行ってただけなんだよ。




 それなのに……




 まさかあんなことになろうとは、いったいだれが想像できただろうか。








「ねえ、お兄さん」




 棒のアイスを咥えながら歩いていると、どこからともなく声が聞こえてきた。



 オレは無視して歩く。




(やばいな……マジでやばい)




 暗がりの向こう、電信柱の裏になんかいたような気がしたのだ。




「そこのお兄さん」




 オレは知らない。なんも見てない。だから構わないでくれ。



 上半身裸の男なんかに興味はないんだ。



 しかもでけーし。軽く百八十は越えている。




「そうです。あなたのことですよ」




 くそっ……横を通り過ぎる間際、うっかり目を合わせてしまった。




(はっ?)




 途端にそいつはオレに向かってポージングを決めてくる。



 リラックスポーズ――フロント、バック


 ダブルバイセップス


 ラットスプレッド



 やばい。これは絶対に見たらダメなやつだ。早く立ち去らないと。



 あれだな。きっと変質者ってやつだ。通り魔的なアレだよ。
 



「お兄さん、マッチョはお好きですか?」




 サイドチェスト


 Do you like muscle?


 Do you love me?


 加えて、ニッと白い歯




「はあぁぁっ!?」




 ボタッと、アイスがアスファルトの上に落ちて無惨な姿になった。



 幻聴か? なんか一瞬変な言葉が聞こえたような気がしたけど。



 クルッと美しいターン



 実にいい身体だ。ボディビルダーというより、競泳選手のような理想的な逆三角の体型。




(いやいやいやいや)




 ダメだ。構っちゃいけない。



 オレはそろーと少しずつ後退り、一心不乱に駆け出した。




「あ、待って!」




「ぎゃっ! ついてくんなよ変態!」




 これでも中学生んときに陸上で記録出してんだよ!



 追いつけるもんなら追いついてみろと振り返ると、なんとそのマッチョ野郎はオレのすぐ背後まで迫っていた。




(どうなってんだよ〜)




 どうか、これが夢なら早く覚めてくれ――。










To be continued...next

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