Do you〜?

1話
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【どこかで見た男】







 朝起きたらまずは顔を洗って歯を磨く。



 コンタクトレンズを入れて、それから黒縁の眼鏡をかける。



 まっすぐで癖のないサラサラな髪は、わざと寝癖がついたようにワックスでくしゃっとさせた。



 そろそろ生え際の色がやばそうだ。



 カラーリング剤の買い置きはもうなかったか。学校の帰りにでも買ってこなければ。



 さて、こんなとこでいいか。これでいつもの変装が完了だ。



 今日からオレは高校二年生になる。



 今年も平穏な一年でありますようにと、神様にひたすら祈るしかない。







「おはよう、母さん。今日は目玉焼きにして」




「おはよう……やっぱり今年もその姿でいくつもりなのね」




「もちろん、当然だろ」




「せっかく美少年に産んであげたのに……はい、今焼くからちょっと待ってなさい」




 すぐに出てきたトーストを頬張る。



 珈琲はやっぱりブラックに限るな。




「あっ、髪染め買うから千円ちょうだい」




「いいけど、そんな頻繁にしてたら髪の毛傷んじゃうわよ?」
 



「だけど黒くしないと周りからいろいろ言われるから」




「でもねぇ……」




 まったく、いちいちうるさいんだよな。毎度のことなんだから、そろそろ慣れてくれないかな。



 一年間はなんとか平和に過ごせたけど、まだ気は抜けないのだ。



 この平穏無事な生活が守れるなら――



 友人も、



 恋人も、



 賛美の声も、



 憧憬の眼差しも、なにもいらない。




 本当に、オレはなにもいらないんだ。










 
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