箱庭
□好きだと言って。
1ページ/1ページ
「なぁお前、マドンナに告られたって、マジ!?」
「まぁ…ね。」
俺は目を泳がせる。
家が隣同士で、かれこれ幼稚園の時から一緒の俺達。
でもコイツは昔から頭がよくて、スポーツも出来て、しかもイケメンでモテモテ。
そんで最近、急に背が伸びてきた。
そんなお前に、昨日一つだけ上回る出来事が起こった。
それは、クラスで超がつくほど美人で、しかもお金持ちのマドンナに俺が告られたということ。
「うわっ、本当だったのかよ;」
「まぁ、俺様こんなカッコイーし?当然じゃね?」
相変わらず上から見下ろしてくるお前を、俺は鼻で笑ってやる。
そしてお前がいつものように、俺の小さい頃のことをネタにバカにしてくるのを待つ。
でもお前はただ「そうかぁ…」なんて、気の抜けたように呟くだけ。
アレ…なんか、いつもと違くね…?
「なんだよ…俺が告られて、そんなショックか?」
いつまでも俯いている、お前の顔を覗く。
そしたらバチッと目があった。
急に体が熱くなって、胸がいっぱいになって、もうどうしていいか分かんなくなる。
何か言おうとパクパクと金魚みたいに口を動かす。
声が出せない。
いや、出しちゃいけない。
今出したらきっと、この想いを丸々お前にぶつけちゃう。
けど、気持ちが溢れて、声が出ちゃいそうだ――――
「あ…お、俺…」
口が勝手に動く。
これ以上は本当にヤバイのに、目を逸らすことさえ出来ない。
あぁ、もうダメだ――――
「お前が好きだ。」
それは突然だった。
一瞬、本当に何が起こったのか分からなかった。
だって俺が言おうとした言葉を、何故かコイツが先に言ったんだから―――。
「え―――」
「て、言われたのか?」
「…はぁ…?」
「いや、マドンナにさぁ。」
「え…」
アレ、こいつに告られたわけじゃないのか…?
なんだよ、人の気も知らないで、そんなこと軽く口にすんなよ…。
「え…お前、なんで泣いてんの…?」
「泣いてねぇし!」
「いや、だから泣いてるって。」
「うっせぇ!俺が泣いてねぇつったら、泣いてねぇの!!」
「あれ、デジャブ…?」なんて言いながら、お前は泣いてる俺の頭をなでてくる。
それで更に俺は号泣して、お前は凄く困った顔をしながら、一生懸命どうにかしようとあたふたする。
そんなお前が、俺は凄く大好き。
絶対いつか、俺の事を好きだと言わせてやると心に決めながら、今日も俺達は帰路につく。
― end ―
続編はこちらから→ 『オムライスの上にハートを描こう』