箱庭

□オムライスの上にハートを描こう
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「あー…だりぃ〜…。」


そんな事を口にしながら、慣れた手つきでチキンライスを炒めるお前。


本当にこいつは何でも出来るんだな…なんて感心しながら、その姿を眺めていた。





今日は家庭科の調理実習の日。


この学校では何故か男女に別れて班がつくられている。


先生曰く「女子に頼らないように!」だそうだ。




しかし男子は「たりー」とのことでほとんどサボり。


そのせいで俺は、こいつと二人でオムライスを作る羽目になった。





「おい、何見てんだ。手伝えよ。」




眉間にシワを寄せたあいつが、急にこっちを見る。

ここまで全部作ってたくせに…と思いながら頬杖をつく。




「俺は食べる係なのぉー。」


「そんな係りはありません。ホラ、皿持ってこい。」


「へーい。」




どっこいしょと重たい体を持ち上げ、立ち上がる。


きゃっきゃと楽しそうにおしゃべりしている女子が目に入る。



俺も交ぜて欲しいなぁ…なんて思いながら、少し背伸びをして食器を取り出す。





すると「宮くん」と声をかけられた。


振り返るとそこには、以前俺に告ってきたマドンナがいて、物凄い笑顔でこっちを見ている。




「4枚、お皿取ってくれない?」


「おー、いいよぉー。」




また背伸びをして頼まれた通り、4枚のお皿を取り出し、マドンナに渡した。




「ほい。」


「ありがと。」




たったそれだけのやり取りだった。


なのに……






「大地!!」






あいつが久々に俺の名を呼んだ。


けどあまりにも大きな声だったので、皆が驚いてこっちを見る。

俺も驚いた。


何か言ってフォローしてやるべきなんだろうけど、頭が回らなかった。





「早く、皿持ってこい。」





そう言って、あいつは下を向き、それ以上何も言わなかった。



なんで怒ったの?

何にそんな熱くなってんの?

きっと皆もそう思ったと思う。



けど気を遣ってか、皆また友達とおしゃべりし出した。





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