不器用さも愛しい5のお題
□いっぱいいっぱい
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――北魏・武泰(ぶたい)元年/528年・五月。
どうも、己に関わる男たちは、己で遊ぶのが好きらしい――。
婁昭君(ろうしょうくん)がそれに気付いたのは、何かにつけ用事を作って自身を呼び寄せる夫の上司・爾朱栄(じしゅえい)が、必要以上に身体に触ったり、首筋や二の腕に腕を絡めてきたりしたからだ。
そのたび、昭君はむきになって爾朱栄の手を払う。それが、彼には面白いらしい。
無論、夫である高歓(こうかん)も例外ではない。
『言うことを聞かない・生意気』という、女としての落第点を及第している昭君の性質を逆手にとって、いじめたり、からかったり、ここではいえない様々な手を使って昭君を遊び道具にする。
――冗談じゃないわよ、あたしはオモチャじゃないってのに。
でも、そういうことをしてくる男たちは、昭君の審美眼からすれば「決して悪くない男」で、だから困ったりする。
昭君からすれば、とびきりの男は夫・高歓である。
端正な男ぶりといい、抜群な侠気といい、豪胆ながら緻密な計算ができる性格といい、昭君は彼に惚れ込んでいる。
その分でいえば、昭君の観察では、爾朱栄はちょっと品がなく、おつむが少し足りないのか、後先考えないところが頂けなかったりする。――顔がいいから、七難を隠しているように感じ取ってしまえるけれど。
要するに、昭君は面食いである。
だから、高歓や爾朱栄にバカなことをされても、まぁ、許しちゃおうかな? と甘くなってしまうのである。