落書き
□雨に降られても
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「あら…降ってきたわね。バジル君、大丈夫かしら」
奈々の声に我に返り、その言葉にハッとして窓に目を向けると聞き返した。
「え?もしかして、バジル君傘持ってかなかったの?」
「そうなのよ、ツッ君迎えに行ってくれる?すれ違うかもしれないけど…」
「う、うん、もちろんだよ」
パーカーを羽織ると玄関に向かい、傘を2つ手にとり外に飛び出した。
「結構降ってるな…」
傘を差し、商店街の方へ急いで足を運ぶ。
バジルの事だから雨宿りなんてしないだろうと、辺りを見渡しながら進む。
まだ商店街にさしかかる前に探していた人影が目に映る。
「バジル君!!」
少し大きめの声を出して近づくとバジルは少し驚いてツナに眼を向ける。
「どうされたのですか?こんな雨の中。何か用事でもあるのですか?」
スーパーの袋を両手に持ち、びしょ濡れだが、あまり気にした様子もなくそうツナに質問をする。
「バジル君を迎えに来たんだよ。大丈夫?結構ビチャビチャだね。寒くない?」
そう言えば傘しか持ってこなかった。タオルとかあった方が良かったな。
さしていた傘を差し出し、バジルの上にかざし相手の様子をうかがう。
「わざわざ有難うございます。大丈夫ですよ、雨ぐらい。気温もそこまで低くないですから」
目が合うとにっこり笑って答える。
思った通りだ。バジル君はすぐなんでも我慢する。面白くない。せめて自分の前では素直になって欲しい。
濡れている襟元が冷たそうで、空いている手をそっと頬に当てる。
やっぱり…
「冷たいね…」
走って来たからオレの手が熱いのもあるかもしれないけど。触ってみて感じたままオレは口にする。
ちょっと困った顔をして笑うと君は大丈夫ですよと告げる。
「何か拭く物持ってくれば良かった。ごめんね、気がきかなくて」
「いえいえ、わざわざこうして迎えにまで足を運ばせてしまい、かえって申し訳ありません」
ぶんぶんと首を振って否定し頭を下げる。