落書き
□君の存在
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ゆずれないもの
あれから10年。月日が過ぎるのも早く、環境も変わって、そして…自分も変わる。色々変わっていくけれど変わらないモノもある。
オレの好きな人。
これからも変わらない。
きっと、ずっと。
オレの事好きでいてなんてわがまま言わないけど。オレは君の事好きだから。だから…
一緒にいたい。
珍しく敵陣で。君と一緒になる。オレがボスになってからは初めてじゃないかな。まあ、大した相手でもなかったけどかなりの精鋭で行くことになって。たまたまなんだけど。君もオレも負ける相手じゃないと悟り、オレを置いて直ぐにバジルはオレを制して先に進んで行った。もう少し一緒にいたかったな…
君が負けるわけないけど。悔しいけど、君はオレが守らなくても十分に強い。
わかってるのにそんな事を考えてたら。
「10代目!!」
別れたはずの彼の声が聞こえて。オレは漸く自分の状況を把握した。
後をつかれていたんだ。自分はまさに攻撃されるところで。バジルの声がなかったら正直ちょっと危険だった。
「どうされたのですか?貴方ともあろうお人が…」
オレの失態に呆れてそう漏らす。オレが気付いていると思ったんだろう。当たり前だ。いつもなら気付くはず。
君に会って、安心してしまったなんて言ったら怒られるだろうな。
悠長に考えている暇はない。まだ危険な状況だ。敵はいなくなった訳ではない。姿を表しただけで。未だに見えない敵を含めるとかなりの数に囲まれてるのは、流石にオレでも解る。
オレは大勢との戦闘に不向きだ。出来なくはないが1対1の戦いの方が経験は多い。その点君は割と応用が利く。一人でも戦ってきた証拠。
また、守られた。
前から君はオレを守るように戦う。10代目に就任後は更にその意図ははっきり見えるようになる。仕事ですからと、割りきる君にオレは納得していない。その呼び方も本当はあまり好きじゃない。君は律儀だからこうゆう事は滅多にハメを外してくれない。
「だって、10代目は10代目でしょう?」
と返される。
まあ社会的にはあたり前なんて思うかもしれないけど。
仕事だけでなく君がオレを想っていることは知ってるつもり。だってオレ達恋人同士だろ?
付き合いだしたのは10代目に就任してまもなくだったけど。想っていたのはもっとずっと前から。異例なこの関係は特に秘密にもしていなかった。かなりの公認だと思ってる。だってせっかく君と一緒になれたのに周りに教えてあげないと。良いことなんだから。君は恥ずかしいと良く言うけれど。
社内恋愛だってちゃんとすることしてたらみんなは割と大丈夫だと思うんだけどな。君はちゃんと認められてるのに。
寧ろオレの方が認められているかわからないものだ。
そんな君との関係にオレは不満はないんだけど。欲を言えば守りたい。君を。仕事としてではなく一個人として。
そんな事を考える様になった時だ。
君と2人、敵陣の中。
緊張感漂う中、君の隣は何故だかとても安心した。
いつも真剣な君に、こんな風に思うのは、変なのかな。
君の隣で戦いたい。
「ねぇ…一緒に戦ってくれる?」
もちろん、こんなのんびりしたオレの言葉に驚いて否定的な答えが返ってくる。
「!?…何を仰ってるのですか。拙者一人でも十分ですよ?わざわざ10代目が…」
「わかってる。君が強い事は。君がそういう立場なのも。だけどオレは『君』と一緒に戦いたいんだ。足手まといになるかもしれないし、いても意味ないかもしれないけど」
バジルの言葉を遮って、自分の言いたい事を言うと返事を待った。
ほんの少しの間があって、直ぐにバジルは口を開く。
「足手まといになんて…今の10代目はご自身で思っているよりずっとお強いですよ。拙者なんかよりずっと」