落書き
□白蓮華
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水面に浮かぶ色とりどりの華
睡蓮
ピンクにオレンジ、鮮やかな赤。
そして真っ白。
大きな葉からひょっこり見える蕾もある。
【白蓮華】
修業場所へ行く道中。林の中に沼みたいな池みたいなのがあって、子どもが入らないように柵が一応してあった。
川も近いからこういう池もなくはなく何個かはあった。
君とは何度となく通った道だったけど、その池を見て君は声をあげる。
「あ…あの花…」
「?…何、バジル君」
その声につられオレもその池の方を見る。
そこは色とりどり蓮の華が咲いていた。
あんまりこうやってこの華を見たことなかったな。
「…あ、えーと蓮の華だっけ」
ある人を連想させるし、何だかあんまりオレは好きじゃないかな。
「こちらでは、始めて見ました。綺麗ですね」
ちょっと嬉しそうに言うバジル君に同意して答える。確かに綺麗だし。
「…そうだね。随分咲いてるね」
「ホントですね。朝日に照らされてキラキラしてますね」
朝っぱらからキラキラしてるのは君の方だ。
そんな事は口に出来るはずもなく。
「あの花…好きなの?」
ゆっくり見ている時間もなく、歩きながら話しを進める。
「はい!なんか…その生態が…良いなあって思ったんです」
少し嬉しそうにそう伝える君の言葉にホントに好きなんだなと思う。
「ふーん、普通に咲くんじゃないの?」
「蓮の華は、どんな汚れた水でもその身で浄化して綺麗な花を咲かせます。それに花と同時に実をつけます」
オレの疑問に君はすぐに答えをくれる。
「へぇー意外に凄い花なんだね」
「…沢田殿みたいですね」
オレが感想を言うと、思ってもない言葉が返ってきた。
「え?なんで?むしろバジル君みたいだよ」
驚いてそう返すと君も驚いた顔をしていた。
「え?拙者が?」
「だってさ…あんな世界で、あんな父さんと過ごしてきた君が、こんなに綺麗で素直で良い子だから。…白い蓮みたい」
相手の反応にオレは思った通り君に伝える。割とすらすら言葉が出てきて自分でもびっくりする。結構恥ずかしい事言ってるなあ。
オレの言葉にほんのり頬を染めて、今度は君が言い返す。
「そ、そんな事ないです。さ、沢田殿だって毎日こうやって修業して、日々必ず成長している…やった分だけ結果が出ている」
「?」
「だから花をつけて実をつける。原因と結果が必ず見えてます。これって凄いことだと思いますよ」
「そ、そんな事ないよ」
バジル君の勢いに押されながらも照れて首を振る。
「綺麗なオレンジ色のでしょうか…」
そんな話をして今日も修業が始まる。
好きじゃないかったものが意外に気にいることもある。
まあ…君に左右されてるんだけどね。
了