中編

□エンドレス・バレンタイン
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 上の空で授業を聞き流し、放課後になると一目散に部室に走った。

 部室のドアの前に立ち止まり、二回程ノックをする。


「どうぞ」


 と、中から我が麗しのエンジェル、朝比奈さんの声……ではなく、鼻につく爽やかな男の声。
 軽く心の中で舌打ちしてから部室に入ると、


「おや、お早いですね。あなたも女生徒から逃げてきたんですか? 本当、困ったものです。朝からこれば
かりですよ」


 と、ちっとも困ってなさそうな胡散臭いスマイルを浮かべる古泉。
 テーブルの上に山積みにされた、色とりどり箱の山を一瞥すると、ため息を吐きながら両手を広げて肩を
すくめた。

 なんとも嫌みな野郎だ。 俺が鞄しか持ってないのを分かっていながらそんなことを言いやがって。


「いえいえ、こういった物は量より質ですよ。こんな軽い気持ちのチョコレートなんて、いくら頂いてもあ
りがたみなんてありません。やはり、気持ちのこもった物……意中の人から貰ったチョコレートには敵いま
せんよ」



 そうかい。だが、あいにく俺は、チョコレート自体まだ一つも貰ってないんだが。


「それは驚きですね。僕はてっきり、その鞄の中には既に……と思ったんですが」


 と、古泉は横目で俺の鞄を見ながらそう言った。
 何だ、誰の事言ってやがんだ?



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