(違法性一般)
第1 可罰的違法性

第2 超法規的違法阻却

第3 自救行為

□意義
 自救行為とは,一定の権利を有するものが,これを保全するため官憲の手を待つに遑なく自ら直ちに必要の限度において適当な行為をすることをいう(最大判昭24年5月18日刑集3−6−772・裁判集刑事10−231)。
□法的位置づけ
 自救行為の主張は,犯罪の違法性を阻却する事由であり,刑事訴訟法335条2項の主張に当たる(最決昭46年7月30日刑集25−5−756)。
□判例
1)倒産の危機を打開するために自己の借地内にある自己所有の店舗を増築する必要に迫られて,その借地内に突出している隣家の軒先の一部をその承諾無くして切除することは自救行為に該当しない(最判昭30年11月11日刑集9−12−2438)。
2)建物賃借人がその占有を所有者に侵奪者の占有が平穏に帰し新しい事実秩序が形成される前であれば,右賃借人が四日後に侵奪者の占有を鍵の取り替えなどの方法で奪回することは自救行為として違法性がない(福岡高判昭45年2月14日高刑23−1−156)。

第4 被害者の同意

□同意の要件
1)個人的法益についてのものであること
 したがって,虚偽告訴罪に関し,被告訴者の承諾があっても,個人の権利の侵害にとどまらない犯罪であるから,被告訴者の承諾があっても,成立する(大判大元年12月20日刑録18−1566)。
2)同意する者が同意の意味を理解できること
 したがって,自殺の何たるかを理解しない5年11か月の幼児には自己を殺害することを承諾,嘱託する適格がない(大判昭9年8月27日刑集13−1086)。
3)同意は自由かつ真摯なものであること(福岡高判昭30年9月28日高刑裁特2−22−1149)
 したがって,治療のため必要であると誤信させて姦淫した行為には,準強姦罪の成立が認められる(名古屋地判昭55年7月28日刑月12−7−709)。また,強盗の意図を隠して「こんばんは」と挨拶し,家人が「お入り」と答えたのに応じて,住居に入った場合は,真実においては,家人の承諾を欠くものであって,住居侵入罪が成立する(最大判昭24年7月22日刑集3−8−1363)。
4)同意は行為時になされていること(福岡高判昭30年9月28日高刑裁特2−22−1149)
5)同意に係る承諾を得た動機,目的,手段・方法,結果の内容(傷害であれば損傷の部位,程度)などの諸般の事情に照らして,社会的相当性の限度のうちにあること(最決昭55年11月13日刑集34−6−396等)
 したがって,相手が承諾している場合であっても,(ア)性的満足を得るため相手の首を絞め,窒息死させること(東京高判昭52年11月29日東高刑28−11−143),(イ)保険地金詐取の目的で相手を傷害すること(最決昭55年11月13日刑集34−6−396),(ウ)暴力団の指詰め(仙台地石巻支判昭62年2月18日判時1249−145)は,違法性を阻却しない。

第5 推定的同意

第6 許された危険(危険の引き受け)

第7 安楽死

□名古屋高判基準(名古屋高判昭37年12月22日高刑集15−9−674)
1)不治の病に冒され死期が目前に迫っていること
2)苦痛が見るに忍びない程度に甚だしいこと
3)専ら死苦の緩和の目的でなされたこと
4)本人が意思を表明できるときは,本人の真摯な嘱託又は承諾のあること
5)原則として医師の手によるべきだが,そうでない場合にも医師により得ないと首肯するに足りる特別の事情の認められること
6)方法が倫理的にも妥当であること

□横浜地判基準(横浜地判平7年3月28日判時1530−28)
 医師による末期患者に対する致死行為が積極的安楽死として許容される要件
1)患者が耐え難い肉体的苦痛に苦しんでいること
2)患者は死が避けられず,その死期が迫っていること
3)患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために方法を尽くし他に代替的手段がないこと
4)生命の短縮を承諾する患者の明示の意思があること

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