(追徴)
第19条の2
 前条第一項第三号又は第四号に掲げる物の全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴することができる。

□没収不能
 金銭のような代替物は,押収又は封金等によって特定していない限り,没収できない場合にあたるから,その価額を追徴すべきである(最大判昭23年6月30日刑集2−7−777)。
□算定基準時
 犯行時を基準とする。
 したがって,収賄者は賄賂たる物を収受することによって,その物のその当時の科学に相当する利益を得たものであり,没収に代えて追徴すべき金額は,その物の収受当時の価額による(最大判昭43年9月25日刑集22−9−871)。
□共犯者と追徴
1)無免許輸入の用に供した船舶の価額を共犯者数人より追徴する場合には,その各人に対し全額の追徴を言い渡すことができるが,被告人の1人が追徴金の全部又は一部を納付したときには,納付済みの部分については,更に他の共犯者から追徴できない(最決昭31年8月30日刑集10−8−1283)。
2)関税法違反の物件につき,没収に変わる追徴を命ずるにあたっては,共犯者全員に対し,各独立して全額の追徴を命じなければならないものではなく,所有者たる被告人のみに対して追徴を命ずることも違法ではない(最大判昭33年3月5日刑集12−3−384)

(没収の制限)
第20条
 拘留又は科料のみに当たる罪については、特別の規定がなければ、没収を科することができない。ただし、第十九条第一項第一号に掲げる物の没収については、この限りでない。

(未決勾留日数の本刑算入)
第21条
 未決勾留の日数は、その全部又は一部を本刑に算入することができる。

第三章 期間計算

(期間の計算)
第22条
 月又は年によって期間を定めたときは、暦に従って計算する。

(刑期の計算)
第23条
1項  刑期は、裁判が確定した日から起算する。
2項  拘禁されていない日数は、裁判が確定した後であっても、刑期に算入しない。

(受刑等の初日及び釈放)
第24条
1項  受刑の初日は、時間にかかわらず、一日として計算する。時効期間の初日についても、同様とする。
2項  刑期が終了した場合における釈放は、その終了の日の翌日に行う。

第四章 刑の執行猶予

(執行猶予)
第25条
1項  次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その執行を猶予することができる。
1号  前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2号  前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2号  前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。

(保護観察)
第25条の2
1項  前条第一項の場合においては猶予の期間中保護観察に付することができ、同条第二項の場合においては猶予の期間中保護観察に付する。
2項  保護観察は、行政官庁の処分によって仮に解除することができる。
3項  保護観察を仮に解除されたときは、前条第二項ただし書及び第二十六条の二第二号の規定の適用については、その処分を取り消されるまでの間は、保護観察に付せられなかったものとみなす。

(執行猶予の必要的取消し)
第26条
 次に掲げる場合においては、刑の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。ただし、第三号の場合において、猶予の言渡しを受けた者が第二十五条第一項第二号に掲げる者であるとき、又は次条第三号に該当するときは、この限りでない。
1号  猶予の期間内に更に罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言渡しがないとき。
2号  猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言渡しがないとき。
3号  猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことが発覚したとき。

(執行猶予の裁量的取消し)
第26条の2
 次に掲げる場合においては、刑の執行猶予の言渡しを取り消すことができる。
1号  猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき。
2号  第二十五条の二第一項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず、その情状が重いとき。
3号  猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その執行を猶予されたことが発覚したとき。

(他の刑の執行猶予の取消し)
第26条の3
 前二条の規定により禁錮以上の刑の執行猶予の言渡しを取り消したときは、執行猶予中の他の禁錮以上の刑についても、その猶予の言渡しを取り消さなければならない。

(猶予期間経過の効果)
第27条
 刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。

第五章 仮釈放

(仮釈放)
第28条
 懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の三分の一を、無期刑については十年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる。

(仮釈放の取消し)
第29条
1項  次に掲げる場合においては、仮釈放の処分を取り消すことができる。
1号  仮釈放中に更に罪を犯し、罰金以上の刑に処せられたとき。
2号  仮釈放前に犯した他の罪について罰金以上の刑に処せられたとき。
3号  仮釈放前に他の罪について罰金以上の刑に処せられた者に対し、その刑の執行をすべきとき。
4号  仮釈放中に遵守すべき事項を遵守しなかったとき。
2項  仮釈放の処分を取り消したときは、釈放中の日数は、刑期に算入しない。

(仮出場)
第30条
1項  拘留に処せられた者は、情状により、いつでも、行政官庁の処分によって仮に出場を許すことができる。
2項  罰金又は科料を完納することができないため留置された者も、前項と同様とする。

第6章 刑の時効及び刑の消滅

(刑の時効)
第31条  刑の言渡しを受けた者は、時効によりその執行の免除を得る。

(時効の期間)
第32条
 時効は、刑の言渡しが確定した後、次の期間その執行を受けないことによって完成する。
1号  死刑については三十年
2号  無期の懲役又は禁錮については二十年
3号  十年以上の有期の懲役又は禁錮については十五年
4号  三年以上十年未満の懲役又は禁錮については十年
5号  三年未満の懲役又は禁錮については五年
6号  罰金については三年
7号  拘留、科料及び没収については一年

□ 起算点
 受刑中病気のため刑の執行停止を受けた者が逃走し,検事がその所在不明を確認した場合には,執行停止を受けた者の病気が通常の経過をとれば刑の執行に耐えうる程度に治癒しえたと考えられる時期に右執行停止を取り消すのが相当であり,もし,検事が取消しの措置に出ないときは,その取消し決定があったものとして,その時点から刑の時効が信仰するものと解すべきである(大阪高決昭45年1月19日高刑集23−1−1)。
□ 刑の執行
 死刑の確定判決を受けた者が,刑法11条2項に基づき監獄(刑事施設)に継続して拘置されている場合には,死刑の時効は進行しない(最決昭60年7月19日判時1158−28)。

(時効の停止)
第33条
時効は、法令により執行を猶予し、又は停止した期間内は、進行しない。

(時効の中断)
第34条
1項  死刑、懲役、禁錮及び拘留の時効は、刑の言渡しを受けた者をその執行のために拘束することによって中断する。
2項  罰金、科料及び没収の時効は、執行行為をすることによって中断する。
(刑の消滅)
第34条の2
1項  禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで十年を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで五年を経過したときも、同様とする。
2項  刑の免除の言渡しを受けた者が、その言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで二年を経過したときは、刑の免除の言渡しは、効力を失う。

□「刑の言渡しは,効力を失う」の意義
 刑の言い渡しに基づく法的効果が将来に向かって消滅するという趣旨である。
したがって,刑罰に処せられたという事実を量刑の資料とすることはできる(最判昭29年3月11日刑集8−3−270)。
□1項前段と後段の関係
 懲役刑の執行終了後10年を経過しない間に罰金刑に処せられた場合でも,その罰金刑が本条1項後段により言い渡しの効力を失ったときは,この懲役刑の言渡しは,その執行終了後10年を経過したときに効力を失う(最決昭52年3月25日刑集31−2−120)。

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