(刑の変更)
第6条
 犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。

□犯罪時
1)新法だけを適用する事例
 犯罪の着手が新法施行前でも,その終了が施行後であるとき(大判明43年5月17日刑録16−877)
 複数の犯行が包括一罪を構成するとき(単一意思の発動に基づき同種の行為を継続したため包括一罪を組成する場合に,その途中で刑罰法規に変更があったとき)(大判明43年11月24日刑録16−2118)
 継続犯につき,新法施行後に行為が完結したとき(最決昭27年9月25日刑集6−8−1093)
 牽連犯につき,旧法時にそのうちの一部が完成した場合でも,他の犯罪が新法施行後に成立したときは,全体に新法が適用される(大判明42年11月1日刑録15−1498)
 従犯につき,幇助行為が旧法時に終了しても,正犯について新法を適用すべきとき(大判明44年6月23日刑録17−1252)。なお,拳銃の不法所持の正犯が不法所持を継続中法改正があり刑が加重された場合,改正前に拳銃の購入を斡旋することにより正犯の不法所持を幇助した者に対しては,改正前の旧法を適用すべきであり,新法を適用すべきではない(大阪高判昭43年3月12日高刑集21−2−126)がある。 
2)比較対照をする事例
 詐欺破産罪につき,旧法当時に行為が終了しており,処罰条件の破産宣告が新法施行後に確定したとき(大判大15年11月4日刑集5−535)
3)その他
 常習犯加重規定が新設され,その前後にまたがる常習としてなされた麻薬の不法譲渡等の行為は,それが不可分の関係にあって一罪と認められる場合でない限り,これをその前後によって区分し,それぞれ行為時法によって法律上の処遇を判断すべきである(最大判昭31年12月26日刑集10−12−1746)。
□法律の意義
 本条の「法律」とは,法律であると,その他の命令であるとを問わず,すべての刑罰法令をいう(最判昭24年9月1日裁判集刑13−355)。
□刑の意義
1)刑に該当しないもの
 刑の執行猶予(最判昭23年6月22日刑集2−7−694)
 保護観察(高松高判昭29年4月20日高刑集7−6−823)
 親告罪(通説)
 時効(通説)
 刑法45条後段(福岡高判昭43年8月24日)
 交通犯則通告制度における反則金の限度額の変更(大阪高判昭44年5月6日判タ237−327)
2)刑に該当するもの
 労役場留置期間(大判昭16年7月17日刑集20−425号)
□変更廃止の有無
1)新法に特段の定めのある場合
 法令の廃止前にした行為に対する罰則の適用については,その廃止後もなお効力を有する旨が規定されている場合は,本条の適用を待つまでもなく,当然に行為時の法令が適用される(最判昭30年7月22日刑集9−9−1962)。
2)新法に特段の定めのない場合
(1)尊属殺人罪(旧200条)成立後,被害者が民法の改正により直系尊属から除かれたときは,犯罪後の法律により刑の変更があったとはいえない(最判昭27年12月25日刑集6−12−1442)
(2)物価統制令3条に関し,同条違反の行為があった後に,同令に基づき価格等の統制額を指定した主務大臣の告示が廃止されても,刑の廃止にあたらない(最大判昭25年10月11日刑集4−10−1972)。
(3)外国とみなされていた奄美群島との間の密輸出入罪については,同地域が外国とみなされなくなった後は,刑の廃止があったものと解すべきである(最大判昭32年10月9日刑集11−10−2497)。
(4)旧道路交通取締法施行令41条に基づく旧新潟県道路交通取締規則8条による乗車制限が廃止されても,同施行令41条は,公安委員会の定める制限が,その時々の必要により適宜変更あるべきことを予想し,行為当時の制限に違反する行為を処罰しようとするものであって,その廃止前にした行為について刑の廃止があったとはいえない(最大判昭37年4月4日刑集16−4−345)。


(定義)
第7条
1項  この法律において「公務員」とは、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員をいう。
2項  この法律において「公務所」とは、官公庁その他公務員が職務を行う所をいう。

□ 公務員とは,官制,職制によってその職務権限が定まっている者に限らず,すべての法令により公務に従事する職員を指称するものであり,その法令には単に行政内部の組織作用を定めた訓令といえども,抽象的な通則を規定しているものは含まれる(最判昭25年2月28日刑集4−2−268)。単純な機械的・肉体的労働に従事する者は含まないが,当該職制等の上で職員と呼ばれている身分を持つかどうかは問わない(最決昭30年3月1日刑集9−13−2596)。
□ 公務分担の機関として公務員の職務を行う所は,法令に基づいて設けられたと否とによらず,公務所である(大判大3年11月10日刑録20−2079)。

第7条の2  この法律において「電磁的記録」とは、電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。

(他の法令の罪に対する適用)
第8条  この編の規定は、他の法令の罪についても、適用する。ただし、その法令に特別の規定があるときは、この限りでない。
□ 特別の規定
 「特別の規定」がある場合とは,明文又は法令の規定の性質上,刑法総則規定の適用を除外することが,規定の目的を達するに必要な場合をいう(大判大6年12月12日刑録23−1357)。

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