第11章 共犯

(共同正犯)
第60条
 二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

□要件
@客観的に、共謀に参加した者の誰かが実行に着手
A「実行」と評価できるだけの共謀関係
 現実の実行を分担しない以上、単なる意思の連絡や共同犯行の認識では足りず、「他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を実現」するだけの共謀が必要
→単なる認識では足りない。
 主観面:被告人の意思内容(動機)
 客観面:犯罪遂行過程において被告人が果たした役割等(謀議の際の発言、犯行資金の調達の分担、利益の分配の有無等から判断)
=「自己の犯罪」の意識があるかが問題。

(教唆)
第61条
1項 人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。
2項 教唆者を教唆した者についても、前項と同様とする。

(幇助)
第62条
1項  正犯を幇助した者は、従犯とする。
2項  従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。

(従犯減軽)
第63条
 従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。

(教唆及び幇助の処罰の制限)
第64条
 拘留又は科料のみに処すべき罪の教唆者及び従犯は、特別の規定がなければ、罰しない。

(身分犯の共犯)
第65条
1項  犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。
2項  身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。

□身分の意義
 本条にいう身分とは,男女の性別,内外国人の別,親族の関係,公務員たるの資格のような関係のみに限らず,総て一定の犯罪行為に関する犯人の人的関係である特殊の地位又は状態をいう(最判昭27年9月19日刑集6−8−1083)。 
・営利目的誘拐罪における「営利の目的」は,本条1項,2項の身分に当たらない(大判大14年1月28日刑集4−14)。
・麻薬輸入者の処罰と,営利目的の有無という麻薬輸入者のより重い処罰とを定める麻薬取締法64条は,営利目的の有無という犯人の特殊な状態の差異によって刑の軽重を区別しているものであって,本条2項にいう「身分によって特に刑の軽重があるとき」に当たる(最判昭42年3月7日刑集21−2−417)。
・正犯が営利の目的を有していることを認識しているに過ぎない幇助者については,重い営利目的大麻輸入罪ではなく,本条2項により,軽い(単純)大麻輸入幇助罪が成立する(東京高判平10年3月25日判時1672−157)。
□共犯の意義
 本条1項は,共同正犯,教唆,幇助のいずれにも適用がある(大判大4年3月2日刑録21−194)。
□適用法条
 非身分者が身分者に加功した場合について,二種の判例がある
1)尊属殺人の共同正犯である非身分者について,「本条1項により刑法200条への該当を認めた後,「刑法60条,200条に該当するが本条2項により刑法199条を適用する」とすべきである(大判大7年7月2日新聞1460−23)。
2)占有者の身分なき者が,業務上占有者たる身分ある者とともに後者の占有する金員を横領したときは本条1項により業務上横領罪の共同正犯が成立し,非身分者には本条2項により単純横領罪の刑を科する(最判昭32年11月19日刑集11−12−3073)。
□構成的身分
積極例
1)偽証罪における「法律により宣誓した証人」(大判昭9年11月20日刑集13−1514)
2)収賄罪における「公務員」(大判大3年6月24日刑録20−1329)
3)強姦罪における「男性」(最決昭40年3月30日刑集19−2−125)
4)事後強盗罪における「窃盗犯人」(大阪高判昭62年7月17日判時1253−14)
5)背任罪における「他人のためにその事務を処理する者」(大判昭8年9月29日刑集12−1683)
6)横領罪における「他人の物の占有者」(大判明44年5月16日刑録17−874)
消極例
1)他人と共謀して実父の住居に侵入することは,身分により構成する罪への加功とはならない(最判昭23年11月25日刑集2−12−1649)
2)公職選挙法235条2項における「当選を得させない目的」を有することは構成的身分ではない(東京高判昭53年5月30日高刑集31−3−143)
□加減的身分
1)常習賭博罪における「常習性」(大判大2年3月18日刑録19−353)
2)業務上堕胎罪における「医師」等(大判大9年6月3日刑録26−382)
3)業務上横領罪における「業務上他人の物を占有する者」(最判昭32年11月19日刑集11−12−3073)

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