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めぐる季節を越えて
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さらさら清涼な風が吹き抜ける。

雲一つない真っ青な空。




町はずれの教会ではささやかな結婚式が執り行われていた。
ロック・コールとセリス・シェール
今まで様々な困難があったがそれを乗り越えやっと今日という日を迎えたのだ。





めぐる季節を越えて
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「ちょ……ちょっと!ロックってば!」


ロックはセリスの手をガッチリと掴みやや強引に引っ張っている。
結婚式の後に行なわれていたパーティーで
突然ロックが“抜け出そう”と軽く耳打ちをしてきたので何気に着いてきたら
パーティー会場からどんどん離れた場所に行くのでセリスは慌てて止めた。



「ど……どこに行くつもりよ?」
「う〜ん……二人で落ち着ける場所……?」
「落ち着ける場所??」



セリスの疑問にロックは答えず周りを見渡し歩く。
純白のマーメイドドレス、胸元にはジトールから取り寄せたきらびやかなパールのネックレスが
セリスの美しさに負けじと彩りを見せている。
慣れないウェディングドレスのせいか足元が覚束ず、
さらに悪戯に吹き抜ける風のせいでベールが取れそうになり頭を押さえた。
教会から少し離れた小高い丘までやってくるとロックは繋いでいた手を放した。



「うん、ここなら落ち着けそうだな」



そう言うと日陰になっている大きな木の下へとセリスを促した。
ここで少し落ち着こうという事らしい。
仕方なくそれに従う事に決め、ロックに寄り添う。
ロックはポケットの中からハンカチを出すとそれを地面へと敷いた。
てっきりドレスが汚れない為のセリスへの配慮と思いきやなんと自分がその上に座った。



「ちょっと……こういう時普通女性のお尻が汚れないようにするのが紳士の嗜みじゃないの?」



呆れ顔で両手を上げ溜息を付く。
するとロックが意味有りげに満面の笑み浮かべそれに応えた。



「セリスはこっち」



そう言いながら自分の膝の上を指差す。
一瞬その行動の意味がわからずセリスはキョトンとした。
が、次の瞬間ギョッとしながら照れつつ慌てるその姿にロックは軽く吹いた。



「なに今更照れてんだよ。ほら、ここなら汚れないだろ?」
「べ……別にハンカチでいいじゃない!な……なんでわざわざロックの膝に……」
「俺がしたいの。つべこべ言わず座りなさい」



窘められているのに不満を覚えつつもセリスはドレスに気を使いながら
ロックの膝の上に不器用に座る。
満足そうな笑みを浮かべるロックとは相反してセリスは居心地が悪くぎこちない。



「ほら、もっと俺にくっついて」
「あ……あのねぇ!ここ外なのよ。なんでこんなにくっつかなくちゃいけないのよ」



何気に怒り口調でセリスは言いやったが、
恥ずかしい時こそ彼女はそれを隠す為にわざと怒ったように見せる事をロックは知っている。







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