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クリスマスプレゼント第二幕
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リスマスプレゼント

第二幕





「オペラに出る?」


ロックの素っ頓狂な声にカウンター越しに座っているセリスは静かに頷いた。
ここはロックの働くダイニングバー。
ロックはバーテンとして仕事中である。


「うん……仕事探してたんだけどやっぱこの容姿だとマリア,マリアと言われてなかなか難しくて……。
そんな時たまたま団長さんと再会したの。考えたんだけど仕事もないしやってみようかなぁって」

そう言うとセリスはカクテルを口に含んだ。


ロックは不思議に思う。
セリスが女優を自ら進んでやると言うなんて信じられなかった。

以前身代わり作戦の時最終的にはやってくれたが納得させるまでにとても時間がかかった。
あれから女優という仕事に興味でも持ったのだろうか?
とてもそんな風には見えなかったのだが。


「それでこれからちょっと忙しくなっちゃうのよね。毎日練習で。
特に私なんて素人だし人一倍練習しなきゃ」
「……そっか」


注文が入ったカクテルを作りながら複雑な気持ちになってくる。


徐々に復興活動が進んできている現在、
余裕を持ち始めてきた人々の興味が演劇や芸術などに目がいき始めていた。
特にオペラは人気が高くジトールでも憧れの的でありそれの出演者など異常なほどの人気ぶりだ。

ただでさえ可愛くてセリスは目立つのにオペラなんかに出演したら
更に可愛さを世の中の男どもに見せつけてしまう。



誰にも見せたくない。


――俺の目から離れた所に行かないでほしい


切実にロックはそう思う。


勿論口には出さず自分の胸に留めてはいるが。


「凄いじゃないか!何の役するんだ?」


話を聞いていたのか同じバーテン仲間が隣から入ってきた。
セリスは少し考えるように頭を傾げ机に肘を付かせた。


「うーん……よくわかんないけどドラクゥさんの恋人役っぽい」


その言葉にロックの心は機敏に反応する。


(ドラクゥの――恋人役?)





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