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Revenge Panic☆
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Revenge Panic☆





一人の男性がお届け物の荷物を持ってある家へ向かっていた。
去年結婚したばかりの新婚さんが住んでいるのだが
そこの奥さんがとても綺麗で優しいので
お届け物を配達したついでに
気を利かせて出してくれるお茶を啜りながら会話するのが
この町に訪れた時のささやかな幸せの時間だった。



しばらくの間会ってなかったので奥さん元気にしてるかなと思って心弾ませていると
いつの間にか家に到着していた。


――コンコン


軽くドアをノックしてみたが何の応答もなくドアノブへ手をかけるとなぜか回った。
不審に思ったが声をかけながらドアを開ける。



「セリスさん、お届けも……」

「あんの男ぉぉぉぉぉぉ!!もぉ許さない!!!」



ばぁん!!!


もの凄い叫び声とけたたましい音が男の耳に入ってきて
一瞬何が起こったかわからず目の前の光景に唖然とした。


セリスと呼ばれた若奥さんが激しくテーブルに拳をぶつけていたようだ。
というのも、ぶつけられた先と思われるテーブルは完全に破壊されており
セリスの拳の先にはその残骸しかない。



見てはいけないものを見てしまった、と男は思った。



まるで氷女のような冷たいオーラを纏いながらも、
その瞳は青白い炎が燃え滾っていた。


赤い炎よりも熱い青の炎。


完全に固まっているその男の存在にやっとセリスは気づいたのかパッと表情を変えた。
その表情からは先ほどの恐ろしい形相から一転
男の知っているいつもの天使のような笑顔をこちらに向けてきた。



「あら……やだ……来てたの?ごめんなさいね♪お茶でも出すわね」



と何事もなかったかのように笑顔で話しかけてくるセリスに男はやっとフリーズ状態を解いた。



「いやいや!あ……いいです!いいです!!急いでるので!」



勿論急いでなどいないのだが破壊されたテーブルを見ていると
恐怖心が湧き、今すぐこの場を立ち去らねばという想いに駆られた。


「そうなの?なぁんだ……暇だったから話相手にでもなってもらいたかったのに……」


シュンと項垂れるその仕草はなんとも可愛らしい。
男はとりあえず先ほどのセリスの態度には触れず、
荷物をテーブルに……いや、破壊されてしまったので
セリスに直接差し出した。


「これ、頼まれていたものですよ。なかなか若い女性には人気の美容液で手に入れるのに苦労しました」
「あっ……手に入ったの?!!嬉しい!!最近顔のたるみがすっかり気になっちゃって」
「いやいや、セリスさんいつも本当に綺麗ですよ。美意識高いですね」
「やだぁ、お上手なんだから!!」


笑顔で化粧品代を手渡すセリスにお茶を断った事を少し後悔した。
しかし今更急いでないと言ったら先ほど恐怖に駆られて立ち去ろうとしたことがバレてしまう。
仕方ないが今回は諦めようと思い最後に頼まれていた伝言を伝えようと口を開いた。


「あっそうそう!ここ来る前昨日隣町でロックさんに会いましてね……」


「―――――!!」


なんですって?と言わんばかりにセリスの目尻がぴくっと反応して上がったような気がした。
男は一瞬おののいたが話を進める
「……明日こちらに帰って来るそうですよ。そう伝えておいて下さいと伝言を受けました」
「……へぇ……で、ロックは今何してるんですか?」
平静を装って受け応えてしているセリスであったが目が完全に据わっていた。


「あ……えーっと……近くの洞窟で珍しい何かが発見されたらしくてそこへ寄ってから帰る……と」


もう男はセリスを見ることは出来なかった。


伝言だけ伝えると男は逃げるようにその場を後にした。




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