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ホントのキモチ
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ホントのキモチ






あなたはいつも私を惑わす。
あなたはいつも私の心をいとも簡単にかき乱す。



あなたはズルイ。
私はいつも振り回されてばかり。



今までこんな事はなかった。
他人に心乱されることなんてなかった。
心冷たい冷徹な帝国将軍――それが私だった。
無駄な事を嫌い、他人との芯の交わりを拒み、自分の殻に閉じこもる。
その方が楽だったから。
そして戦い以外のことは何一つ必要ではなかったから。
寧ろ、必要以上の人との交わりは時に精神に不安定さを来す。
戦いに身を置く人間として余計な事は切り捨てるべきだ。



帝国と決別してから、あの頃とは環境ががらりと変わり
人の温かみを知り、我ながら年相応の女としての風格が自分の中に備わり出したと思うが
戦いに身を置く立場は変わっていない。
世界の平和の為に私は懸命にその使命を真っ当すべきだ。



それなのに――



どうして私の心はこんなにも乱れているのだろう?


あなたが、私をやたら気にかけてくれるから。
あなたが、私をいつでも守ろうとしてくれるから。



あなたが――私の側でいつでも笑っているから




いつも側で私に差し伸べてくれている温かい手。
だけど私はそれを手にする事が怖かった。
もし、いつかその手が離れる事があったら。

いや、違う。ホントはそんなことに怯えてるわけではない。

私は怖いのだ。心の底から人と接する事が。
自分の気持ちを素直に表現する事が……



恋愛をする事が――



そんな事誰にも教わっていない。
今まで戦い以外の事を私は知らない。
他人に自分の心の内を見せる事なんてできない。
渦巻いた醜いこの感情を他人に見せるなんてできない
こんな私が人を好きになってどうなるというのだろう?
どうにもならない。
それにそんなことは今の状況下からしたら不必要以外の何物でもない。



それなのにこの想いは何なんだろう?
この……胸の中に疼く彼への想い。
恋なんかではないと思いたい。



生まれて初めて抱く苦しくなったり、熱くなったりするこの感情。
そんなコントロールの効かない自分の心に戸惑うことしかできなかった。







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