スパイラル
□彼女らの祝福 〜青い、蒼い空は〜
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「遅い・・・」
彼女が、色んな手を使ってくれたらしく、病院を出ることは容易だった。
まだかな、とそわそわしている自分を笑って、こちらに向かってくる女性に手を振った。
「ごめんなさい。遅くなって」
「いや。別に」
冷たい言葉で、照れ隠し。彼女は、分かっているらしく、クスクスと微笑んでいた。
「歩さん。早くいきましょう?」
「あぁ。」
彼女の無防備な手を、前触れなく握る。
彼女は、一瞬びっくりして笑う。
幸せ。
この二文字の意味を噛み締めた気がした。
「歩さん。私、幸せです」何だよ、急に。と笑って言うと、彼女も笑った。
あ。
二人の声が、重なった。
「あ、鳴海弟。久しぶり」高町亮子。浅月香介。
二人で楽しそうに笑っていた。