スパイラル〜another〜

□名残惜し
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コンコン。
病室のドアを叩く音が響いた。
一定のリズムで、テンポよく叩かれたそれは、開かれた。
「鳴海さん」
「あぁ、あんたか。どうした、久しぶりじゃないか?」
すっかりと大人びてしまった彼女にどこか距離を感じ、胸が傷んだ。
彼女は一つため息をつき、歩を見た。強く、屈折しない瞳で。

「一緒に、お墓参りに行きませんか?」
何の変哲もない、お誘いだった。
彼女の話によれば、蒼香さんのお墓は、海が見渡せる、綺麗な花畑に造られたそうだ。
「別に良いが、どうして俺なんだ?」
「・・・鳴海さんが、へしょげているんじゃないかと思いまして」
「は?」
「気付かれないとでも思っていたんですか?そんな苦しそうな顔して・・・っ」
ふわりと、柔らかい布が体をくすぐらせた。
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