ハイキュー!!

□目は口ほどにものを言う5
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部活の後、急いでスマホを確認する。

電話もメールもLINEも返ってきていなかった。

せめて、一目会えないだろうか。

少し遠回りしてなまえの家の方へ足を伸ばす。

中学時代、一度だけなまえを送って行った道を歩く。

体育の授業で足を捻ったなまえは、誰にも言わず、保健室にも行かなかった。
心配になって帰りにこっそり声をかけて、家まで送った。

あの日、このまま恋人同士になれたらと思った。









目は口ほどに物を言う5









なまえの家の角に差し掛かるとなまえの声がした。

「送ってくれてありがとう!」

「おう。」

「じゃあね!」

「なまえ。」

「何?」

「いつでも来いよ。遠慮すんな。」

「…うん。うん。ありがとう。」

涙まじりの声がした。

影が、一つに重なった。

影山に抱きしめられているなまえが、いた。

なまえの、泣き声だけが、静かに聞こえてきた。







どうやって家に帰り着いたのか、分からない。

ベッドに沈み込む身体は気だるい。

自分の小さな嫉妬が、なまえを失うことになるなんて、夢にも思わなかった。

何度もスマホを確認しては、ため息をつく。

影山に抱きしめられるなまえを見て、心が折れそうになった。


それでも、受け入れられない。

簡単に諦められない。

ちゃんと話がしたい。












国見は私のどこを好きになったんだろうか。

そういえば、そんなこと、話したことなかったな。

中学の時から優しい人だと思っていた。

中2の時、体育で足を捻ったことがあった。
対したことないと思って放置していたら、だんだんと腫れて痛くなってきた。
後2時間授業を受ければ帰れるし、と思って油断したら、結構酷くなってしまった。
それでも、誰にも言えず、我慢していた。

帰り道でいよいよ歩けなくなってしゃがみこんでしまった。
そのうち飛雄がくるか、足の痛みが引いて歩けそうなら帰ろうと思っていたら、自転車にのった国見が来た。

「後ろにのって。」

「え?」

「いいから。家どっち?」

有無を言わせず国見は家まで送ってくれた。


不思議だった。

飛雄以外の男の子と一緒に帰ることは今までなかった。
緊張、すると思った。
でも、しなかった。
知らない男の子の背中。
自転車をこぐ頼もしい背中に、こっそり頭をつけると、知らない匂いがした。
この匂いに包まれるのは、嫌じゃなかった。

「痛い?」

「…。」

「痛いなら痛いって言ってもいいと思う。」

「痛い。」

「ふっ。意地っ張り。」

「なんで知ってるの?」

「…たまたま、見たから。」

「ありがとう。」

「もっと頼れば?」

「…あんまり、そーゆーことしたくない、かな。」

「そう。じゃあ、勝手に助けるから。」

人といて、こんなに安らいだ時間があることを初めて知った。
あたたかい背中にしがみついて呼吸をすると涙が出た。
言葉数は少ないけど、他愛ない時間が、心地よい。
足は痛いけど、道端にしゃがみこんで感じていたさみしさや心細さは、もうない。
呼吸をするのさえ息苦しく感じていたのに、今はゆったりと息が吸える。

自分の家に着いた。
もう少し、一緒にいたいと思っていた。

「じゃあ、また明日。」

「うん。ありがとう。また明日!」

国見の後姿をいつまでも見ていた。











次の日の朝、昇降口でなまえに会えた。

「おはよう。」
「おはよう。」
「昨日の…。」
なまえは走って教室の方へ行ってしまった。

どうしたらいい?
好きなのに、こんなに好きなのに。
拒絶されて、じくじくと膿んでいく胸が痛んで腫れていく。
なまえじゃなきゃ、治せないこの痛みが、なまえを求めて行き場の無い感情が増幅していく。


君じゃなきゃだめなのに。











昇降口で国見にあった。

心なしか、元気が無いように見えた。
昨日、たくさん泣いて腫れの引いていない目を見られるのが嫌で走って逃げた。

これでいい。
これでいいの。

この胸の痛みは、一生抱えていくから。

恋の痛みを教えてくれてありがとう。


勇気ください。

強がれる勇気、ください。

素直になれない自分への罰に、初めての恋を捧げます。

だから、一人でも立って歩ける勇気、ください。



国見 英くんが、確かに好きでした。



後悔先に立たず。
自分から手放した、自分から戻ることなんて、都合良くできない。




(20141030)



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