ハイキュー!!

□目は口ほどにものを言う4
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国見の絶望感に満ちた顔にいたたまれず、走って逃げた。

深呼吸して、精一杯の強がりを、唯一の特技である作り笑いを浮かべて、いつもの私を演出した。

少し大げさに笑い声をあげれば、いつもと変わらない日常に戻れた気がした。






目は口ほどに物を言う






運よく席替えで国見の隣から脱却できた。

友達への挨拶もままならないくらい、足早に教室を出た。

できれば、今日はもう国見の顔をみたくない。

向かう先は決まっていた。



スーパーに寄って買い物を済ませる。

一度家に帰り、無難なジャージに着替える。

自転車にまたがり、近くの影山家にお邪魔する。

昼休みが終わる頃に飛雄ママには料理しに行っていいか尋ねておいた。

勝手知ったる隣人の家でも、キッチンに入るのはやはり許可がいるだろうと思っての行動だった。

思いのほかトントン拍子にことが運ぶ。飛雄ママは出先で今日は帰宅できないから飛雄の夕食の支度をどうしようかと思っていたらしい。

快く許可をいただき、飛雄の大好物を作る。

豚肉とタマネギを先に軽く炒めておくと飛雄は喜ぶのだ。

あとは、たまごも!半熟!半熟!

温度調整を誤らなければ温玉は家庭でも出来ちゃうのです!

ご飯も多めに炊いておにぎりを作る。

家から持って来ていたカバンの、私の手作りの蜂蜜レモン入りのタッパーの上におにぎりを2個乗せてカバンを肩から下げる、カレーは火を止め余熱で、たまごは火からあげて冷ます。
飛雄を迎えに行こう。
一度影山家を出た。





烏野高校の体育館へ続く道を進む。
学校見学で一度来たことを思い出し、駐輪場に自転車をおいて、ボールの音がする体育館を探す。

「よし、今日はおわりだ。あとは自主練ー!クールダウンしっかりな!」

「「「「「はい!」」」」」

ちょうど練習に区切りがついたようだった。今なら声をかけれるかな?と体育館の扉へ寄ると、綺麗な女の人が出てきた。

「何か用?」

「あ、はい。影山…影山飛雄って居ますか?」

「…影山の彼女?」

訝しげに尋ねられる。え?え?そんな不思議そうな顔を…はっ!飛雄、あんた、友達おらんの…?彼女なんてもってのほかってこと…?飛雄ならあり得る。

「ちっ、ちち、違います!!」

「ふふ。今呼ぶわね。影山ー!」

綺麗な女の人はマネージャーさんだろうか?
慌てる私をみて微笑んだ。

「あの、ありがとうございます。」

ぺこりと頭を下げると優しく微笑んだ。

「清水さん、なんすか…って、なまえ?」

「とびおー!

これ賄賂!これが欲しかったら私と結婚して!」

「は?…いいけど、早くそれよこせ。」

「はい。ちなみに、今日はカレーです。」

「でかした!」

すでに私が持って来たおにぎりにかぶりついてモフモフ食べながら、飛雄は私の頭をグリグリと撫でた。

髪ボサボサになるわー、なんか周囲が暗くなったなと思ったら、体育館の窓や扉からこちらを伺う人だかりができていた。

「ヒッ!」

「ちょっと、みんな、怖がってるから!」

先ほどの美人さんが私のまえで盾になってくれていた。

「す、すまん。」

部長さんっぽい人が申し訳なさそうに謝ってくれた。
外ではなんだからと体育館の中に招き入れられ、まるでミーティングでもするかのように円が作られ、そこに引っ張り込まれた。右は飛雄、左は先ほどの美人さんだ。

「影山ー!それ誰だ?俺その子初めて見るぞ!」

小柄で元気な子がまくしたてるように飛雄にたずねた。

「確かにうちのクラスの子でもないよね、ツッキー。」

「何、王様の彼女?あー、奥さんって言えばいい?」

背の高い2人に見下ろされ圧倒されしどろもどろになる。

「や、これは…」

「あー、こいつは俺の幼馴染でみょうじなまえです。」

「うちの学校の子か?」

「いや、青葉城西です。」

「な、なぁ!さっきの、けけけ、結婚って、なんだ?」

飛雄は2個目のおにぎりをむしゃむしゃ食べながら説明した。

「さっきの、結婚してってやつは、こいつなりの話し聞いてくれって言う合図みたいな、決まり文句です。もともとは、俺もこいつも恋愛とか全然だめで、俺たちの両親が心配し過ぎて、30歳までお互い独身だったら結婚しろって言われてるのから来てるんで。」

「え、じゃあ、30歳まで独身だったら結婚すんのか?」

「まあ。」「はい。」

呆気にとられる烏野バレー部の人達を飛雄と2人顔を見合わせてきょとんとする。
なんか、変なこと言ったかしら。

「それより、相談があるんじゃないの?良かったら聞かせて?」

美人マネージャー、潔子さんが気を使ってくれて、話を聞いてくれた。

「実は…」


国見を怒らせてしまった事
鈍感って言われて嫌だった事
勢い任せに別れるといった事

何度も何度も頭で考えて、聞いてもらえるように順序良く話せるようにシュミレーションしたのに、上手く言葉にならない。

潔子さんが気を使って相槌を打ちながら聞いてくれるのに、グチャグチャに絡まった感情がほどけなくて言葉が途切れ途切れになる。

絞り出した言葉を丁寧に拾って、みんな心配そうに私を覗き込みながら話を聞いてくれた。

飛雄はおにぎり2個食べ終えて蜂蜜レモンを隣の日向くんと取り合いながら食べ始めていた。

「そう。」

「はい。
もう、恋愛よくわかりません。付き合うのもよくわかりません。あんな、怒らせたり、辛そうな顔させちゃうんだったら、付き合わなければ良かった。」

「それは、違うんじゃねーか?」

「ぉお!のやっさん!どうしたんだよ?」

リベロの西谷さんと坊主の田中さんが声をあげる。

「そいつ、…その国見って奴は、多分ヤキモチやいたんだろ?
ヒロインはヤキモチ妬くことねーだろ?」

「あ、はい。ヤキモチってよくわかんないです。多分したことない。」

「だろ?だから、国見って奴もなまえに理解して欲しいとかそんなんじゃねーと思う。
単に、自分の感情を上手くコントロールできてなかっただけで、なまえに対して怒ってるってわけじゃねーと思うぞ。」

すごい。
西谷さんは、聞いた話だけで国見をもう理解しているのか。
私は、もう友達歴も長いのに、そんなこと全然思わなかった。
国見の気持ち考えてなかった。

「そっかぁ…そうなんだ。」

「男からすると、やっぱり、自分の彼女が他の男と仲良くしてるのとか、あんまり見たくないかな。」

爽やかな菅原先輩が話してくれた。

「たしかに。自分より仲よさそうだと、凹むなぁ・・・。」

一見こわもての東峰さんも同意する。

「そうね、相手のことを考えてあげることも大事だけど、なまえはどうなの?」

「わたし?」

「そう。なまえ自身はどう思ってるのかな?
今なら落ち着いて考えられるんじゃない?」

自分の気持ちかぁ。
私は、どうしたいのかな?
ここに相談に来たってことは、何かを解決したいと思ってるからで、いつも何かあると飛雄に話すから、無意識に飛雄の顔が頭に浮かんで勢いで来ちゃったけど、私は、どうしてここに来たんだろう?

「君さ、要領いい方じゃ無いんだし、器用に恋愛しようと思わなくていいんじゃない?」

「つつつ、ツッキーぃ!?」

のっぽの金髪メガネくんが…月島くんが言葉を続ける。

「聞いてて恥ずかしい。ここで話すより本人と直接話したら?」

至極もっともな発言に月島くんの隣の山口くんが慌てながらフォローしようとしているが上手く言葉にならなずにあたふたしている。

「…もう、別れたからいいの。なんか、話聞いてもらえてスッキリしたので。もういいんです。」

諦めたような笑みをうかべる私に、烏野バレー部のみなさんは釈然としない様子だったが、

「じゃあ俺、カレー食いたいんで帰ります。」

という飛雄の一言で解散になった。








「またなんかあったらおいで?話聞くことくらいしかできないけど。」

「良かったら連絡してね。」

主将の澤村さんと美人マネージャーの潔子さんが気遣って声をかけてくれた。

潔子さんとは、連絡先を交換してしまった!やった!

「はい。ありがとうございます!」

背中を押してもらえた気がした。

「おい、なまえ!早くのれ!」

いつの間に見つけたのか、私の自転車を駐輪場からひいて歩く飛雄が待っていた。

「わかったー!お先に失礼します!」

烏野バレー部のみなさんに一礼して自転車の後ろに乗った。

飛雄は早くカレーが食べたいのか、漕ぎ出した自転車は勢いを増していく。

潔子さんの姿が見えなくなるまで、私は大きく手を振った。

「うまく、いくといいわね。」

「あぁ。」

澤村さんを始め、潔子さんやバレー部の方が各々が各々なりになまえを心配していた。








飛雄の背中に語りかける。

「ねぇ。いいチームだね。」

「あぁ。」

「主将の澤村さんなんて、チャラ川先輩の数千倍素敵な先輩だよね。」

「あぁ。」

「潔子さん、いい人だったし。」

「あぁ。」

「日向くんは元気で、明るくて…っく、ふっぅうあ"ああぁーん!!」

「相変わらず汚ねー泣き方。」

いつもそう。何かあると、飛雄の背中で大泣きする。
それがわかってるから、泣きたいのも、泣きそうなのも、分かってくれるから、ついつい甘えて来てしまう。

さっきのカレー食べたいってのも、半分は本当だけど、半分は私が泣くから。
いつものパターンだから、自然と連れ出してくれたのだ。






私は泣きながら思っていた。



国見、ごめん。
ごめんなさい。
いい彼女じゃなくて。
鈍感で、気づいてあげられなくて、逃げてごめんなさい。

私、

私は、

国見の彼女、もっと続けたかったよ。

でも、もう、自信がないよ。

だから、ごめんなさい。

ーーわたしは、目覚めた感情に蓋をすることに決めた。




バイバイ。国見。

バイバイ。国見を好きになった私。

(20141030)



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