ハイキュー!!

□目は口ほどにものを言う2
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国見と付き合い始めて1ヶ月が経ちました。






目は口ほどに物を言う 2








相変わらず、私は鈍感と言われ、国見は隣の席でウトウトしながら授業に出ている。

付き合い始めた次の日には、すでにみんなが知っていて、口々に、

「やっとくっついたか!」

といった。教室内はお祭り騒ぎだった。男子にいたっては『国見オメデトー』と叫んでいた。

「や、やっと?」

「なまえ鈍感だから、私らすごい心配してたんだよ。」

「そうそう。国見君もすごいよね。」

女子は集まってキャーキャーはしゃいでいる。

「え?そうなの?」

「中学の頃からさー。ほんと頑張ったよね!」

「え?中学の、頃から?」

「そそ。なまえは知らないかな?

・・なまえは影山と国見、どっちと付き合ってんだろうって噂。」

そんなんあったねーと同じ中学出身の子達が言っている。

「し、知らない!何それ!」

「あーやっぱり?

影山の練習とか付き合ってるから、てっきり影山と付き合ってんだろうって話してたけど、なまえは全力で否定してたしねー。」

「本当に気づいてないんだね。なまえ鈍感だね。」

「そうだね。まぁ、そこも可愛いんだろうけどさー。」


キャーキャーとはしゃぐ友人の声が遠のく。

昨日、国見も言ってたな。鈍感って。

クラスのみんなが知ってるのに、私だけ知らなかったんだ。。。

ってか、とびおと私が付き合うとか・・・ないない。

確かに、お互い恋愛事には疎いから、『30歳までに結婚してなかったら、結婚しよう。』みたいな約束はしてるけど。

恋人?カップル?・・・無いない。

胸にモヤモヤとした黒い雲のような感情の塊が渦巻く。

良かったっていってくれる友人たちに、ただ、笑うしかなかった。







かくいう私と国見の関係はあまり変わってない。

国見は私のことを「みょうじ」から「なまえ」と呼ぶようになったが、私は相変わらず「国見」と呼んだ。

席は隣だし、帰りはたまに一緒に帰ったりすることもあるが、国見はバレー部で毎日練習あるし、特別変わった事は無い。

このまま自然に距離が近づいていったりするんだろうなって思っていた。








「ねぇ、私って、そんなに鈍感かな?」

幼馴染の影山飛雄は、お互いの母親同士が仲がよく、また家も近いことから、幼いころから兄妹のように育った。

私の、本音で話せる数少ない人物だ。

母のお使いで影山家を訪れ、偶然在宅していた飛雄に話を聞いてほしいともちかけた。

「はぁ?しらねぇよ。そんなことで悩んでんのか?」

影山家の庭先で、バレーボールを触っている飛雄の近くに座り込んで、「あのさ・・」と相談してみたが、やっぱり人選ミスだった、飛雄は恋愛相談相手にふさわしくなかったようだった。

「うん。だって、とびおくらいしかこんなこと聞けないよ。」

期待半分、諦め半分で話を聞いてみる。

「なまえは友達多いだろうが、片っ端から聞いて来い。それより、ちょっとボールだししてくれ。」

「・・はいはい。」

うん。飛雄に聞いたのが間違いだった!

相変わらずバレーの事しか考えてないんだなっと思ったら、別々の高校に行っても中学の頃から変わりない距離感に安心感を抱いた。

私は重い腰をあげ、素直にバレーボールを打ち返した。







昼休みに先生に頼まれ、ノートを教室に持っていく途中、角で誰かにぶつかり、盛大にノートをぶちまけてしまった。

「すいません!大丈夫ですか?」

「こちらこそ・・ってみょうじ!」

「あ!金田一!」

同じ中学出身の金田一だった。

飛雄とはあまり仲は良くないみたいだったけど、私とは普通に話をしてくれるいい人だ。

「わりぃ!」

「全然!大丈夫だから、気にしないで!」

金田一はノートを拾うのを手伝ってくれた。

「全部持てるか?」

「うん。大丈夫!ありがとう。」

ふと、飛雄の「友達に聞いてみればいい」という言葉を思い出して、金田一に聞いてみることにした。

「あ、そうだ、あのさ、私って、鈍感かな?」

ノートを拾うためにしゃがみこんだまま、小声で話しかけた私と金田一はコソコソと身体を屈めたまま話し始めた。

「は?なんだよいきなり。」

金田一も私に合わせるように、小声で、体育座りみたいな形で聞いてくれた。

「じつは・・・。」

国見と付き合い始め、周囲の人間から自分が鈍感であること、やっと国見と付き合いだしたかと言われたことに悩んでいると伝えた。

「あー。まぁ、正直、俺でもわかるくらいだから、みょうじは鈍感なんじゃないか?」

「え?例えば?ねぇ、いつ?どんなとき?」

急に普通の声の大きさで金田一の両肩を掴んで前後に揺らす私に、金田一は「うわぁ」と驚いて声を出した。

「〜っ!それは、俺からは言えねぇ。」

私の手を掴んではずすと、先ほどまで拾って積み上げていたノートを抱えていた私から取り上げて立ち上がり、教室まで持っていってくれようとするが、逃げようとしているのは一目瞭然だった。

背を向けた金田一の制服を掴んで、静止する。

「ちょっと待ってってば!ねぇ!教えて!」

「無理だって。国見に聞けよ。」

「それは無理ー!そんなこと聞けないよ、ただでさえ馬鹿にされてるのに!」

鈍感という言葉は決して褒め言葉ではない。

むしろマイナスのイメージを持つ言葉だ。

それを、何度も繰り返し伝えられているってことは、自分で気づけというメッセージも含まれているんじゃなかろうかと私は思っていた。

「きーんーだーいーちー。」

進もうとする金田一の制服を引っ張って静止しようとするが、男女の力の差を前にズルズルと引きずられる。

廊下を往来する生徒からはクスクスと笑われている。

「俺からは言えねぇって。」

「そこをなんとかー!」

「だから、無理だって!」

「おーしーえーて!」

金田一は溜息を1つ吐いて、振り向いた。

「国見が説明しないってことは、知られたくないのかも知れねぇーだろ?」

「でも、「随分楽しそうだね。」!」

「国見!」

金田一の顔がだんだん青白くなる。

「何、話してるの?なまえと金田一ってそんなに仲良かったっけ?」

心なしか国見は怒っているようだ。

「別に、何も。国見に話すようなことじゃない。」

私は、なんとなく、国見に言いたくなかった。

金田一は何も言わなかった。正確には、目の前で真っ黒いオーラを纏った国見には何も言えなかった。

「あっそ。」

「あっ。」

国見は無表情のまま、離れていった。



冷たく放たれた言葉は、その場に居た全員を凍りつかせるのには十分の冷たさをはらんでいた。



「・・怒ってた?よね、今の。」

はっと我に返り、金田一に意見を仰いだ。

さすがに怒っているのは分かる。

でも、何に怒っているのかは分からなかった。

「今のはさすがにまずいと思うぞ。」

「え?そうなの?追いかけるべき?」

うんうん。と肯く金田一にノートをお願いして国見を追いかけた。







「国見。」

走って追いかけると割とすぐに見つけられた。

左手で右腕の袖辺りの制服をつまんで静止すると、振り払われた。

振り払うくらい、私何かした?

ズキッと胸が痛む音がした。胸にナイフがつき刺さっているみたいだ。

「何。」

振り向いた国見は酷く冷たい目をしていた。

はじめてみる顔に戸惑い、声が震える。

「ぉ、怒ってる?」

「何で?」

「だって、顔、怖い。」

ハァ

溜息1つこぼして、何も言わない国見を、ただ見つめることしか出来なかった。

「・・もういい。なまえが鈍感なのは今に始まったことじゃないから。」

ズシンと胸に重たいものがのしかかってきた。

諦めたように吐き捨てられた言葉は、最近気にしているワードナンバー1の『鈍感』だった。

「・・なにそれ。」

まただ、また言われた。

この言葉に、私は1ヶ月近く苦しみ続けているのに、体の良い断り文句のように繰り返され、何度も何度も傷ついてきた。

「だから、もういいって言ってるだろ。一々聞いてこないで。」

国見はイラついている感情を上手く消化できないのか、こぶしを握り締め、なまえから目線をそらした。


なぜこんなにそっけない態度を取られなければならないのか、
国見は何で怒っているのか、
どうしてそれが鈍感に繋がるのか、
どれだけ沢山考えても恋愛経験の無いなまえには到底考えが及ばなかった。



――――もう、我慢の限界だった。

「・・分かった。

もう、国見の彼女やめる。」

目に溜まった涙は大洪水が起こり、決壊し始めた。

ボタボタと涙が頬を伝って流れる。

「は!? 別にそこまで言って無いじゃん!」

さすがに泣き出したなまえに、国見は慌てだした。

「違う。私が、もぅ、・・しんどい。

何で国見が怒ってるのかわかんないし、

わかんないことで怒られて、また鈍感って言われて、

皆にも鈍感って言われて、

・・・もう、やだ。全部やだ。やめる。国見の彼女やめる!!!!!」

私は逃げた。

後で聞こえる国見の静止を振り払うように走って逃げた。







やっぱり、私には無理だった。


恋愛は、難しい。






(20141009)





続きます。



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