ハイキュー!!

□目は口ほどにものを言う
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今日の国見はちょっと変だ。

いつもボーッとしているか、前の席の子の影に隠れて寝ているのに、今日は起きていて、時折こちらを見てくる。

隣の席から何か言いたげな表情で。

鋭い双眼に射抜かれて、視線に気づくと身体がドキっと跳ねる。

時々漏れる、はぁ、というため息は何を意味するのだろうか。

しかし、目は口ほどにものを言うとは、まさにこのことか!と私は1人、興奮気味に納得した。






目は口ほどにものを言う







今日はアンラッキーな事に日直だった。

アンニュイな国見と。

放課後、国見には黒板消しをお願いして、日誌を書いた。

休み時間にほとんど書いていたため、書きかけたままの欄を少し埋めるだけで早く終わった。
あとは今日の日直のコメントだけだった。


「くにみー!コメント書いてー!」

「分かった。」

チョークの粉がついた手をパンパンと叩きながら、私の座っている席へゆっくり歩いてくる。

国見とは中学の時から一緒で、軽く話をする程度だったが、高校生になり、同じクラス、隣の席になってからよく話をするようになった。

国見は私の前の席の椅子を引いて、後ろ向きに座った。

机を挟んで向かいあう。


「みょうじさ、昨日の練習試合見に来てたでしょ?」

「あー、うん。知ってたの?」

昨日は青葉城西と烏野の練習試合だった。

・・負けたの、落ち込んでるのかな?

「まぁ。

で、誰狙いなの?及川さん?

…まさか影山?」

じーっと真っ直ぐ、真剣な顔で聞かれる。

この顔と眼光に私は弱いのか、身体がビクッと反応する。

「いやいやいやいや。

あんな優男ムリでしょ。中学のときから馴れ馴れしく名前呼びしてくるし!

確かにとびおとは幼馴染だし、仲良いけどさ、そんなんじゃないよ。」

及川さんの顔を思い浮かべてゾッとした。

あの人「なまえちゃーん!」ってわざと遠くから呼んで近づいてくるのよね。

毎回毎回。女子の視線がいたいのよ!ほんとに!

及川さんの顔を思い浮かべ、自分の顔の前で虫を払うように、そんなことはないと否定の意味を込めて手を振る。

「その時隣にうちのクラスの及川ファンで有名なあーちゃんいたでしょ?その付き添い!」

今日の国見、やっぱ変だ。なんだか、怖い。

「ふーん。

女子ってみんな…大体の人は、一回は及川さんのこと好きになるのかもって思ってた。」

はっ!もしや!

その時会場に好きな子でもいたのかな?

それで落ち込んでるとか?

国見も男の子なんだなーと女子の妄想力と自己完結によって、次の言葉を言った。

「いやいや、あり得ないから。

確かに容姿は整っておられるし、優しいし、かっこいいけど、それだけで皆が皆、及川さんを好きになるわけじゃないよ!?

むしろ私は好きにならない自信すらあるよ!」

精一杯の励ましのつもりだった。

「なにそれ。」

くしゃりと崩れた表情に少し安堵した。

あ、笑った!やっぱりそうなのかな?

最近仲良いけど、これは聞いてもいいかな?いいよね?いいよね!

「それで落ち込んでたの?

さては、好きな子がいますな!

その子及川ファンなの?」

ワクワクしながら聞くが、国見はこちらに目もくれず日誌にコメントを埋めていく。

「いや。違うらしい。」

すっかりいつもの低燃費モードの国見になっていた。

「そっか。うまくいくといいね!」

みんな恋してんだなー。
なんだか、一足先に大人の階段を登り始めている同級生に焦燥感のような感情を抱いていた。

「みょうじは?

好きなやつ居ないの?」

「あー、うん。

恋愛ごとはちょっと。」

よくわかんないんだよーと濁しても、私の苦手な双眼がこちらを見ている。

サーチライトみたい。

「鈍感だからな、みょうじ。」

「うー、よく言われる。

でもダメなんだよー、自分が自分らしく居られなくなったり、きっと嫉妬とかするし、そんな嫌な女になりたくないの。」



昔からいろんな人の相談を聞いてきた。

勉強のこと、部活のこと、恋愛のこと。

聞けば聞くほどに、自分にはムリだなとか、高度だなって思う。

誰かを思って悩む友人たちに、応援することしかできない自分が歯がゆくもあった。

けれど、誰かと付き合って、一緒に帰ったり、手をつないだり、キスをしたり…とそういう想像が全くできなかった。

やっぱり恋愛って難しい!

いつもそこに行き着いた。



素直に言葉を紡ぐと、国見にはなんとも言えない表情をされた。

「ふーん。

相手の男にもよるんじゃない?」

「そんなもん?」

「そ。

・・塩キャラメルあるけど、食べる?」

国見は制服のポケットからお気に入りのキャラメルの箱を取り出した。

「うん!食べる!

国見の持ってるやつ美味しいから好き!」

笑顔で答えると、一瞬動きが止まり、国見ははぁーっと盛大にため息をついた。

「え!?何事?」

状況不明で混乱中の、わたしに

「みょうじ、目瞑って口開けて。」

といった。

「えー?何する気?」

「いいから!」

目を瞑り、遠慮がちに口を開く。





唇に柔らかい何かがあたって、口の中にいつもの塩キャラメルの味が広がった。


「これで分かった?鈍感なみょうじさん。」

目を開ければ、間近でニヒルな笑みを浮かべている国見。

顔が熱い。

え?何で好きな子いるんじゃないの?

モヤモヤとした感情が渦巻き、ただじっと、国見を見つめた。

驚きすぎて口を小さくパクパクと動かしながら意味を考えた。

これで分かったでしょ?って、ことは…

恥ずかしさで目が潤む。

私の頭はパンク寸前だった。

「く、国見っ。あの…」

「…そんな物欲しそうな可愛い顔したなまえが悪い。」

ガシガシと頭をかいて私を見据えると、

今度は獣のように私の唇を貪り始めた。



始めは軽く触れるキスを何度も何度も角度を変えて、

徐々に、舌が入ってきて、キャラメルを溶かしながら、舌を絡めてくる。

繰り返されるキスの嵐に夢中になって頭がボーッとする。

いつの間にか、頭を撫でられ、逃げられないように後頭部を支えられる。




だんだんと溶かされていくキャラメルが甘く2人を繋いでいる。

無意識に国見の服の裾をつかんでいたらしく、空いている方の手で、手を繋がれる。




やっと離れた唇の間から大きく息を吸い込んだ。

はぁと感嘆のような吐息が漏れる。

国見をみると、先ほどまで自分の口内で暴れまわっていた舌で、自身の唇をペロリと舐めた。

「甘っ。」

「くっ、国見っ!」

「何?もっと?」

キスまでの距離、1センチのところで話される。

つい今しがた、自分の唇を塞いでいた唇が、視界に入る。

国見って、こんな色っぽい、カッコイイ顔してたっけ?

ドキドキと高鳴る鼓動が、うるさい。

ギュッと目をつぶる。


鎮まれ私の心臓!!


「みょうじが好き。

俺と付き合って。」

耳打ちされた声は優しくて、目を開けると微笑む国見の姿があって、そういえばファーストキスだな、いやもう2回しちゃったからセカンドキスも済んじゃったやとか、ちゅーってこんなエロいやつがあるんだなとか、国見とちゅーするの嫌じゃなかったなとか、思っていた。



あれ?わたし、嫌じゃ、なかった?




「返事は?」

確信犯のように、机に身を乗り出した国見へ、私はいま自覚した恋心に従い、真っ赤な顔のままで、縦に首をブンブンふるので精一杯だった。

「じゃあもう一回。」

といって近づいてくる国見の顔を押し返す。

「だ、だめ。

ファーストキスだったのに。

こんなエロいのじゃなくて、もっとこう・・」

チュッと可愛らしいリップノイズをたててキスされた。

「これからのみょうじの初めて全部俺が貰うから。」

安心して。なんて言って笑ったが、実際安心なんて出来るわけなくて。

こんな不意打ちで、

き、キスとかされちゃって、

うわぁーって混乱してる間に…













私は

国見の

彼女になっちゃった



らしい。




「じゃあ日誌だして部活行くから。

帰り校門で待ってて。」

といって国見は颯爽と教室を出て行ってしまった。







これは夢か?現実か?





帰り校門でドギマギしながら待っていると、いつもの国見がやってきて、いつもの眠たそうな目で、お待たせと言ってさりげなく手を繋がれた。

「あ、夢じゃなかった。」

とつぶやいた私に国見は少しだけ、ほんの少しだけ頬を赤らめて、「バカ。」といった。



(20141008)



 

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