ハイキュー!!

□第三話
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「僕からの着信には3コール以内にでること。」


とんだ束縛男だと思ったが、有無を言わさぬ笑顔に、首を縦に振るほかなかった。


もし、首を横に振っていたらと思うと、自分可愛さに甘やかしたと思われてもいい・・・!


確実に地獄行きの切符を握らされていたのだろう。


しばらくは、蛍に逆らえそうにない。








Love me tender








一緒に帰ることになってしまったために、図書館で時間を潰し、蛍の部活が終わるのを待って家まで送るという名の強制連行が実施された。


自宅の場所がバレるのは極力避けたかったが、蛍と一緒についてきた山口忠に、

「でも、・・もう暗いし、送らせてください。」

心配です。なんて伏し目がちに言われたら断ることができず、流されるままに送ってもらった。




蛍と再会した時は厄介なことになったと落ち込んだが、

忠のような可愛い(身長は可愛げがない)後輩に出会えたのは純粋に嬉しかった。

部活では幽霊部員で、真面目に行ってなかったから、後輩の名前なんてうろ覚え程度の認識だ。

「あのっ、みょうじ先輩。」

「なまえでいいよ。」

「ぁ・・じゃぁ、なまえさん。俺、山口忠っていいます。」

「ん。忠って呼ぶね。」

女慣れしていないのか、隣に立つ私にびくびくしながらも自己紹介する姿が可愛らしい。

微笑むと、一瞬面食らったような顔をしたが、すぐにホッとするような笑顔を見せてくれた。

癒し系だな、忠は。蛍とは違って。

だいたい、蛍なんて、夏の夜に儚げにゆらゆらと漂う淡い光の繊細さとは比べ物にならないくらい図太い神経してると思う。

名前負けしてるよ、絶対。

忠は昔から蛍と仲がいいのか、蛍のことを『ツッキー』と呼び慕っていた。

屈託なく笑い、ごめんという姿は微笑ましい。

なんだか、身構えていた数分前の自分を恥ずかしく思った。

忠の癒し系な雰囲気に浮かれて、頬が自然と緩む。

瞬間、頭に痛みが走った。

「痛っ!」

「しまりのない顔。」

悪戯っ子みたいな顔でぶっきら棒に言い放たれた言葉に、蛍の仕業だと理解する。

「つつつ、ツッキィー!?大丈夫ですか?なまえさん?」

「大丈夫、大丈夫。」

結構痛くてうっすらと目に涙が浮かぶ私を心配そうに忠は覗き込もうとした。

「――――えっ?」

「山口、見過ぎ。」

「ごめんっ、ツッキー!」

大きな掌が私の視界を奪うように両眼を覆い、背中に何か当たった。

後ろから抱きしめられるように、蛍の腕の中に吸いこまれていた。

思わず固まる私に、蛍はポンポンと頭を撫でて忠とともに数歩先を歩く。

「・・ごめんって言いたい、のかな?」

数歩先の忠と蛍が振り向く。

「おいていくよ。早く。」

「もとはと言えば、蛍が!」

「はいはい。」

はにかんだ蛍の表情が、2年前のあの日と同じに見えて、鼻の奥がツンッとして目頭が熱くなった。







結局、家の前まで二人に送ってもらい、自室でくつろいでいる時に、着信を知らせる音が響いた。

ギリギリ3コール以内でとることができた。

「もしもし。」

『何、してた?』

「別に何も。」

『そ。』

「なんか用?」

『・・用がなくちゃかけちゃいけないの?』

「別に。」

しばしの沈黙。

ふと、思い当たることがあって、思い切って口に出してみた。

「自分で連絡先入力したんだから、今度はちゃんと連絡つくよ。当たり前でしょ。」

『そうだけど、一応念のため。』

やっぱりか。不安とか、心配とか、そんなところだろうとは思っていた。

外見がどんなに大人びていたって、中身はまだ高校1年生なのだ。

カッコつけたって年相応の男の子なのだ。

まだ、人に深く傷つけられたことなどないのだろう。

だから、その傷が手に負えなくて持て余しているところに、うっかりと私が現れてしまったのだろう。

私が、たまたま、彼に大きな傷を負わせてしまったから、そのリカバリーのために私が必要だと思い込んでいるだけで、本当はもう乗り越えているのに。

「大丈夫だよ。」

君には、私は必要ないのよ。そんな意味を込めて、言葉を贈る。

『なまえが決めることじゃないから。』

「あそ。」

素直じゃない。

きっと、電話の向こう側では、安らかな顔で耳を傾けているのだろう。

天邪鬼め。

「ねぇ、そういえば・・・」







思いのほか話が弾み、1時間ほど、長電話することになった。





(20141004)
(20141005修正)

 

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