みんしょん

□I wish side M
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SIDE H


シートを倒すと何となく気が抜けて、ハア〜ってため息が出た。
少し緊張してたらしい・・。
長かったような短かったような・・・。
だけど、季節はちゃんと変わってて・・。

こっちに来たときはまだそんなに寒くなかったのに、今は風も冷たい。

落ち葉がいっぱいだ。

韓国は、もう雪が降ってるもんな・・。
あいつが知らせてくれる向こうの様子。
初めはかなりホームシックになった。
周りに誰かしらいた毎日から、ぽつんと放り出されたような、
取り残された感じ・・。

2週間か・・・。

やっぱり長いよな。

俺ってもっと大丈夫だと思ってた。
これから、ソロだってちゃんとやれるって・・。

甘かったな・・・。

勿論仕事はきちんとこなした。
俺がバカをすれば、韓国に居るあいつ等に迷惑がかかるから。
俺達は一人のときだからこそ、気を抜けない。
だから韓国での仕事以上に日本での活動にはそれなりに気を使う。

言葉が上手く伝わらないから、誤解をされることだってままあった。
韓国に居れば誰かしら気が付くことだって、日本では勝手が違う。

さすがの俺だって気疲れするって・・。
ここには俺の我儘を聞いてくれるヤツもいないし。



真っ暗な部屋に戻って、先ず思い出すのがあいつの顔だった。

身体を休める為の部屋とは程遠い俺の城。
向こうから持ってきたあいつの写真だけが俺の心のオアシス。

財布に忍ばせたあいつを指でなぞって、そっと胸に抱く。

冷え切った布団に丸まって俺は必死に孤独と戦った。

自分でも意地っ張りだって思うんだ。
素直じゃねえなって。


何度も携帯に手を伸ばした。
日本に来ることが決まってから、国際電話の出来る携帯に買い換えた。

声が聴きたくて・・あいつが俺の名前を呼ぶ声が聴きたくて・・。

―ヘソン。どうした・・?−
―ヘソン・・・ヘソン・・・・−

あいつの前では俺のプライドなんて、なんの意味も持たない。
あいつには隠し事なんて出来ない。
あいつは俺の全部を知ってるから・・。

子供じみた性格も、何処が弱いかも・・・。


だから・・・だから・・・・あえて電話しなかった・・。
ううん・・・出来なかった・・・。

あいつの声聴いたら、我慢出来なくなるって分かってたから・・。

何もかも投げ出して帰りたくなるから・・・。



1回だけ、あいつが出れないって分かってる時間に電話した・・。

留守電のメッセージを聞くためにさ・・。

・・俺って結構女々しいヤツ・・?

制限時間めいいっぱいあいつの声聴いてた・・。ほんの数秒だけど。

そしたら、あいつから掛かってきちゃったよ・・。
俺の電話に。


たまたまその日はラジオの収録があって、携帯の電源を切ってた。
おそらく、あいつも俺が出れないって分かっててかけてきたんだと思う。

良くも悪くも俺達は似てるから・・。

お互い意地っ張りだしな。
まあ、あいつのほうが大人だろうけど・・・。


収録が終わって、カバンに仕舞っておいた携帯を見たらピカピカ点滅してて・・・。

ディスプレイ見なくてもあいつからって、俺には分かった。

留守電に残されたあいつのメッセージ。

『・・・ヘソン・・・ヘソン・・・・アイシテル・・・』
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