じんしょん

□堕ちる
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自覚したのはいつからか・・・。
気が付いたら、目で追っていた。耳を研ぎ澄まして声を探した・・。
ふと気が付くと自分が彼を探していることに、ハッとした・・。
ずっと、ずっとそばに居た存在。

友達、仲間、家族。

どんな言葉も当てはまるようで、当てはまらない。
そんな僕たちの関係。



番組の収録で来ているTV局の楽屋。

6人が集まれば自ずと騒がしくなるのは当たり前。
それぞれのソロ活動が一区切りついて、これからはSHINHWAとしての
活動に入る。アルバム製作、ショーケース、そしてライブ。

年内はずっと一緒。

今日の番組は所謂バラエティだ。
僕達6人が2チームに分かれて競い合う。
女性タレントとペアを組んでゲームをこなしていくっていうやつ・・。


初めての番組じゃないけど、チーム分けでちょっともめる事が多いんだ。

以前、これに出たときはボーカル組とラップ組に分けられた。
自然と僕と彼は同じチームにはなれない・・・。


心の中では「ちっ」って思いながら、相手チームの彼をちょこちょこ
眺めてた・・。


彼は僕の気持ちを知らないから・・。
僕がこんな感情を抱いていることなんて、きっと思いもしないんだろうな・・。


だって、自分でも驚いてるくらいだし・・。

男である僕が、同性である彼をって・・・


僕達6人は、はたから見てもすごく仲が良い。
メンバー同士キスだって平気でしちゃうし、抱き合ったり、手を繋いだり、
肩を組むことなんて日常茶飯事。

別に珍しい事じゃない・・。

合宿所に住んでたから、お風呂だって一緒に入ってたし・・。


だけど、彼だけは僕にとっては特別なんだ・・・。


寂しがり屋のくせに、意地っ張り。
自分の分が悪くなると、すぐ拗ねちゃう。
唇をぷ〜って突き出して・・。


ちょっとした仕草に、女性的なところが見え隠れするんだけど、
見た目に騙される無かれ。

実際はまわし蹴りを得意とする、食いしん坊な男前。
彼の足蹴りは、ホント、痛いんだ・・。





僕はそんな彼が「好き」なんだ。

「好き」って言葉にはいろんな意味がある。

友達の「好き」
likeの「好き」。


僕の「好き」はそうじゃない・・。

彼を友達のままではいたくない・・。
家族でも、仲間でもなくて、もっと、もっと深く繋がりたい・・。


独占したい。
誰にも触れさせたくない。
その笑顔だって、声だって、仕草も全部、
僕だけのものにしたい・・!


彼のウタゴエ、ココロ、エガオ、カラダ
一つも余すことなく、一つも洩らすことなく
髪1本、足の爪まで


全部欲しい・・・。



僕の為だけに、甘く啼いて欲しい。


目の端に、メンバーとじゃれる彼の姿を捉えた。


僕にも屈託ない笑顔を向けてくる。


自覚がないのって罪だよ・・。

僕に手を伸ばして

「なあ、お前だってそう思うだろ?」

無邪気に聞いてくる。


極上の笑顔。極上の声。


僕の胸は、はちきれんばかりにバクバクいってる・・!

さっきから飲んでるパックのジュースが唇について
赤く濡れて艶めいている。

僕の視線はそれしか見えなくて・・・。

濡れたそれが僕の名前を紡ぎだす・・。


「聞いてる?ジナ」
 

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