通り道

□僕の世界
1ページ/1ページ

「ボタン、閉めた方がいいよ」

「ここ、跳ねてるよ」

「ホラ!水飲んで」

ひょんと俺の世界。



事あるごとに、何かと世話を焼いてくれる大好きなひょん。

俺を構う時のひょんの顔は、兄貴ってよりもオンマの方が合ってる。
しょうがないな。って顔して、目尻を下げて俺のことを構ってくる。

いつからそうだったかなんて、憶えてないけど。
気がついたら俺の世話はひょんの役目になってた。

一緒に住み始めた当初、同じ部屋だったからかもしれないけど。

「母親」ってものをよく知らなかった俺は、ひょんがオンマそのもの。

辛い時は一緒に泣いてくれたし、嬉しい時は抱き合って喜んでくれもした。
ひょんが作る食事は、好き嫌い言わずに平らげた。
今思えば、俺が嫌いなものが食卓に上がった事は無かったけどね・・・。

甘える事を知らなかった俺は、何でも自分でやろうとして失敗ばかりを
繰り返してた。

出来る事と出来ない事の区別がつかなかった。

そんな俺をいつも助けてくれたのがひょん。


オンマに甘えるみたいに膝枕をしてくれて、大人になることを教えてくれた。

だけど、俺は「大人」になんてならなくてもいいよ。
いつまでも、いつまでもひょんといたいんだ。


俺の世界はひょんの腕の中だけでいいよ。

雛のままなら巣立っていく必要もないだろ・・。

俺は翼なんか欲しくない。
何処へも行きたくなんかない。


飛べない鳥がいたっていいじゃないか。

俺はひょんがそばに居ないと生きていけない。

俺の世界はひょんを中心に廻ってる。

そして、ひょんの世界も・・・・

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ