‡望むのは…‡

幼い頃からずっと奪ってきた

国も家族もすべて

そしてお前の全てを

あの時手に入れたとばかり思っていた…

だが…

一番欲しいかったモノが手に入らなかった

たったひとつだけ…

未だに手に入らない…







「パパー」


ビービビが仕事をしていた頃、最愛の娘であるビタが入ってきた


「ビタ、どうした?」


ビービビが問うとビタは小さな花を手渡した


「パパ何だか元気ないから元気のお裾分けっ!」


ビタが持ってきた小さな花は黄色とオレンジ色の花で

とても暖かな色で、何処となく彼奴を思い出す色だった


「ありがとう ビタ」


ビービビがお礼を言うとビタは笑顔になり、部屋を出た

ビタが去った後、ビービビはまた小さな花を見つめる

兄弟の中で一番年下で色鮮やかな色で一番欲しいモノだった

力の差を見せつけて、身体を奪って自分のモノにした

あのキレイな色を全て自分だけのモノにしたかったから


(まぁ…また奪っても感心なモノは手に入らないしな…)


しかし、やっぱり欲しいモノは欲しいと思う矛盾した気持ち

最愛の家族がいても欲しいと思ってしまう…

逢いたいのなら逢いに行けば良いのだが

そうなると弟にも再会するため厄介だ

等と考えながら寝室に向かい眠りについた







†††






夢を見た…

一番欲しくて、愛しい人が出る夢を…

俺の名を呼ぶ声、深紅の瞳、色素の薄いブロンドの髪、白くて透き通るような肌

そして、小さな紫の花を取り笑った笑顔も

全てが愛しい…









「んっ…」


ビービビが起きた頃、窓を見ると夕陽が沈み始めていた


「寝すぎたな…んっ?」


ふと右手に違和感を感じ振り返ると


スー スー


破天荒がビービビの手を握ってスヤスヤと眠っていた

もう片方の手に夢で見た小さな紫の花を添えて


「…破天荒」
「んぅっ〜…」


ビービビが手を退こうとすると破天荒は更に力を入れて退こうとしない

ガチャッと音がして入ってきたのは…


「ビービビ兄やっと起きたんだ」
「おい、それより…何で破天荒が此処にいるんだ?」
「パパ…迷惑だった?」
「ビタ?」


何時から居たのかビタがトコトコとビービビのもとへやってきた


「お前が呼んだのか?」
「うん…べーべべお兄ちゃんに連れて行ってもらったの」
「何でまた」
「パパ元気ないんだもん、大丈夫ってパパは言うけど元気ないんだもんっ!それにパパ破天荒お兄ちゃんの写真見てたから、だから…パパの所へ連れてきたらパパ喜んでくれるかなって」
「ビタ…」

ビービビのことを気遣うビタに優しく頭を撫でた


「パパ?」
「ありがとなビタ、凄く嬉しいよ」
「うんっ!」
「ビタ、ミンを呼んで一緒にご飯にしよう。邪魔者は退散だ」
「はーい」
「??」


ベーベベの言う事に首を傾げているとくすくすと笑い声が聞こえた


「…起きてたのか?」
「えぇ、良い子ですねビタは」
「あぁ、俺の自慢の娘だ。ところで、何時までコレこうしてるんだ」
「あっ///」


ビービビに言われて気付いた破天荒は慌てて手を離すが

今度はビービビに押し倒されてしまった


「ちょっ…ビービビさんっ///」
「破天荒…」
「んっぅ///」


いつもは激しくするビービビだが

今回はいつもより優しく愛しさを感じた


「ッぅ…ビービビさん///」
「破天荒…愛してる」
「ビービビさんっ///…でも俺は」
「わかってる…お前の心だけは手に入らないことは」
「!!」


いつもそうだ

どんなに取っても 奪っても

お前の心は

手に入らない

ふと額に柔らかい感触がし

それが破天荒の唇だと気づくのに時間がかからなかった


「…破天荒?」
「ほんとにビービビさんってば、昔から肝心な所だけは鈍感なんだから///」
「えっ?」


何の事だとばかりに首を傾げていると

今度は唇に破天荒は触れるだけのキスをした


「俺だってビービビさんのこと愛してますよ」
「!?」
「俺は昔から貴方が好きで憧れで、でも貴方にとっては唯の処理相手だと思ってたんですよ」


顔を赤くして答える破天荒にビービビは更に愛おしいと思った


「なら、あのオレンジは違うのか?」
「オレンジって…そりゃおやびんは尊敬してますけど恋愛の好きってわけじゃないですよ///」
「破天荒…」
「っぅ…ビービビさん///」


さっきよりも深くキスするビービビに破天荒も首に手を回して身を委ねた

その光景を小さな黄色とオレンジと

そして紫の花が

ひっそり2人を見守っていた




end

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