短編

□全てが愛しく
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俺はお前のことが好きだ。

その大きな瞳も

黒くて綺麗な髪も

白くて透き通っている肌も

全部好きなんだ。

俺は


ルキアの全てが欲しい。



全てが愛しく




俺は今仕事に追われている。
何故かというと隊長が居ねぇからだ。
貴族同士の集まりがどうたらって…
そのおかげで隊長の分の仕事は副隊長である俺が引き受けたってわけだ。

黙々と書類に筆を滑らせ、俺にしてはなかなか手際良く仕事を片付けてゆく。

不意に窓の外を見た。

そう言えば…この頃ルキアに会ってねぇんだよな。
お互い仕事が忙しいから仕方ねぇけど。

…会いてェな。
あぁ、ルキアに会いたい病だ。

そんなことを考えながら、また書類に目を向ける。


…コンコン


仕事に夢中になっていると、ふと扉が叩かれた。
俺は筆を滑らせながら、
「はいはーい、開いてますよー」
と視線も向けずに返事をした。


「恋次さんにお客様です」

「客?わりぃ…今手離せねェから、とりあえず応接間に通して待っててもらってくれ」

「はい!」

声の主は理吉だった。
俺に客?
珍しいな、と思いつつ筆を滑らせる。


「じゃあ、僕はこれで失礼します!」

「おう、ご苦労だったな」


しばらくして、任された分の仕事が終わった。
久しぶりに集中して何時間も仕事したから疲れたな…


「やっと一段落着いたぜ…」


その書類を机の隅に重ねる。
お茶でも飲もう、と思い俺は給湯室に足を進めた。



…トクトク……



お茶を煎れて、机に戻ろうとした時。
ふと何かが脳内を過った。
おかしいな、何か忘れてる気が…


「……あ゙ぁ!!!!」


そういえば理吉が俺に客が来てるって言ってたよな!?
ヤベェ、完璧に忘れてたぜ…
俺はお茶の注がれた湯呑みを片手に、客の待っているであろう応接間に急ぐ。




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