story
□第一章
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『星を取ろうと手を伸ばすから』
そよそよと薫る風。揺れる金色の草原の中に佇む美しき都『レオ』。この国の心臓であって頭脳であるその都は、金石の美しい城壁に囲まれ、優雅に陽の光を浴びていた。
「懐かしいな」
誰かがそう呟いた。城門を抜け広場に出ると、そこにはこの国随一の大きさを誇る『星守りの木』が、国の隅々まで行き渡るようにしっかりと枝を拡げ構えていた。
「前見た時よりも大きいな」
大樹は時の流れを語る。ひっそりと、そして時に残酷に。
「俺ももうじき19か…」
その誰かは悲しそうにそう呟くと大樹を見上げた。木の幹に手を当てると懐かしい思い出が甦ってくるようだった。風がざわめき髪を撫でる。日差しは大樹に遮られ、影を落していた。
「あいつ…相変わらず馬鹿なんだろうな…」
その誰かは眩しそうに大樹を見つめる。そして歩き出す、星の煌めきが魅せる運命へと。