Silver Soul+2-☆

□カフェオレに入れたものを知ってるよ。
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高杉との帰り道。奴はあまり毎日学校に来ないし来ても最後までいることが少ないから、白い息が二つ並ぶ今の時間は、レアなものである。学ランの上に細身のコートを羽織った高杉(冬服仕様)になんだか萌えながら、歩くの速い奴の隣を。急いで歩くと冷たい風が耳やら首に当たっていっそう寒い。耐えかねて速い、と声をかけた。

高杉が道の真ん中で立ち止まる。人通りあるからどう考えても迷惑だろ。端に寄らないと、と頭が働く前に奴のすぐ横を、ママチャリのおばさんが走り抜けた。あっという間。邪魔だなという顔だけ頭に残っていった。
とりあえず常識わけわからん男を引っ張って自分の側に寄らせる。何が引っ掛かったのか知らないけど私の顔を見て微かににやつく高杉。止まれとまでは言ってないしね。ほんとにときたまわからない。
ちかちか目障りなくらいに光る街路樹の電飾の前で立ち尽くしている。高杉がスロースピードで白い掌を伸ばしたかと思うと、頬に指の甲で触れられた。冷たい。びっくりして目を閉じてしまった。ただでさえ骨張ってるのに冬は心もとないな大丈夫か、と思いながら。当の本人は何を考えてるのか、さっきより楽しそうに笑った。あんまりじろじろ見られると照れてしまう、顔をそむけようとした時に例の掌が頬から耳までを撫でて髪をかきわけてきた。寒いんですが。高杉わからない度が上昇するにつれ、高杉の表情から見える、奴の楽しんでいる度数も上がっていくのがわかった。
でも我慢できないので冷たい手を取って自分ので温めるようにする。北風で冷えた冷えたと思っていた指先は、高杉のそれと触れると私ののが全然温かかった。片手で掌を、残った片手で頬をなぶりながら高杉の機嫌はものすごくよくなっていた。なぜだ。


「頬が赤え」

喉の奥で楽しそうに笑う。

「はあ。そう」
「体温高えな」
「まあ高杉よりは」

子供みてえ、だって。
仕舞いにはマフラー巻いた首筋にまでアホほど冷たい掌突っ込んできやがったので、うげっと変な声出して後ろに逃げてしまった。自分の手で失われた体温回復しようとするも手袋してないから自分のも冷たかった。
一人で馬鹿みたいにうわあとか言っていて、対向の歩道のイルミネーションが遮られても気付かなかった。日が落ちかけている。急ぐように横を擦り抜けていく人たちの中で、私たちだけが静かに浮いているようだった。近づいてくる高杉の顔に、北風に吹かれて無造作にかかった艶やかな黒髪が色っぽい。今度は優しく笑って、これまた冷えた、かさつく唇を頬に押しつけられた。

おいっ高杉。

お構いなしである。頬に口づけ、耳の下あたり、ギリマフラーから出た部分から顔を埋めるように温かい首もとまで。
最後に、唇を離した高杉の吐息を近距離で感じて雰囲気にのまれかけ、なんなんだろうと立ったまま。


「た、高杉っ私っ」
「なんだよ」
「ちょっ……
もう無理!寒い!」

言うやいなや奴に腕絡めてくっつきコートのポケットに手を突っ込んだ。あっ間違った、こいつ細すぎてあったまる気しない!と後悔したが遅し。おまえが変なところ冷やすから。もともとここから近い高杉の家に行く予定だった道のりを、くっついたまままた二人歩き始めた。
ずびずび鼻すすりながら歩く。「鼻水つけんなよ」と辛辣な言葉が聞こえた気がしたが、それよりも突き刺さる北風に紛れさせて聞き流した。冬の街をまるでバカップルみたいにべたべたして歩いてる自分たちに苦笑。高杉意外と好きだもんな、こういうの。


「あー寒かったぁっ高杉エアコンつけて」
「オメーその寒がり方おかしくねェか」
「寒い。スカート寒い。かえて」
「今つけたから待て」

あーー寒いと膝を抱えてソファーに縮こまった。高杉は台所の方でがちゃがちゃやり出した。暖房のリモコンどんな場所にしまってんのかと思いきやあらびっくり、まもなく現れた高杉は湯気立ちのぼる飲み物の入ったマグカップを持っていた。ほらよ、とぶっきらぼうに差し出されたのを受けとる。

えっ、えっ、なんか今日の高杉優しくね。失礼だけどこんなキャラだっけ、中身は見たところカフェオレだけど高杉こんなのいれてくれる奴だっけ。
とか考えても、お礼言いながら顔は自然とにやけた。気持ち悪いとか言われるだろうけど。

ちろっ。

「飲めよ」

飲むよ。カップに口つけて飲んだらじわりと熱が落ちていった。甘くなくておいしい。飲んでるのに、隣座って寄ってきた高杉に肩を抱かれた。なんだ今日、ほんと気まぐれだな。あらわになった首筋にまた唇を寄せ、「体は熱いのにな」だって。それはあんたが冷たいだけだ。と、思ったけど、実際暖房とこれであったまってきてたから熱いっちゃ熱いのかもね。
さらさらの髪が触れてくすぐったい。

んー、とカップ持ったままさわさわする髪から逃げてたら、両手はがされて奪われたカップは置かれてしまった。


「なっ」

振り向く。高杉の真意を悟った私は先手をついてあったまった掌で彼の冷たい首を包み、目を見て噛み付くキスしてやった。思わず笑えてきてしまったので離れる。高杉は半ば私を押し倒すように、のしかかるようにしてまた口づけてきた。

甘えん坊め。

怒るってわかってるけどね。綺麗な髪ごと頭をぐりぐり撫でて「いい子」って言ってやった。
しかし高杉は怒らない。よっぽど甘えたい期なのかなぁ〜?笑い。こいつは変なところで不器用である。中途半端な位置で浮いた細い体をきつく抱きしめてやると、さっきはわからなかったけどちゃんとぬくもりを感じた。それは道端でいきなりキスするわからないところも、くっつきながら帰ったのや、カフェオレをいれてくれたときの気持ちを思うからいっそう、なのかな。カフェオレは冷めるが触れ合ったところから熱くなっていく、まだまだ、と、珍しい甘えたがりにときめきを覚えた私は思った。







101225

めいん
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