短編

□loved
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しかしながら、いかに女というものがあざとく時に憎く、なのに何故だか情は尽き果てることがないと、そういった話を聞いたことはある。例えばその時々別れの理由が納得のいかないものだろうと、魅せられてしまう自分がいるのだといった内容だった。

女といったら理性よりも感情論、自己中心的、自意識並びに自信過剰な上顕示欲が異常なものだと思っていた。最近なら携帯依存の症状がそれに加わるのではないかと思い始めていた俺だった。確かによっぽど連絡がないのなら多少不安だろうと思う。だが一応男であるから言わせてもらうとするならば、正直面倒なのだ。何を話していいかよくわからない故に迂濶なことはできない。そう思うのだが。
どうも立場が逆じゃないか。俺が連絡を怠ったとしたら、多少なりとも悲しむのはお前じゃないのか。
寂しいなんて。

三ヶ月。会わないでいたどころかメールも電話も無しだった。お互い忙しかったのだけれど、俺はそこでまた余計な意地を張っていた。たまには会いたいだとか、ほんの少しだけ寂しくて、居たらうるさい筈なのに一人の部屋が嫌だ、とか。大体いつからこんなに女々しくなってしまったのか。お前が雄々しすぎるだけなのか。

まあ、簡潔すぎるほど簡潔に説明すると、久々にメールをして、本日会う約束を取り付けたのだが、俺は何故ギターを抱えている。やたら綺麗になったリビングの床に座り込んで、テレビを流したままでなんとなく指を動かしている。なんだ。思い上がりか。
それでブラウン管越しにだらだらと喋っている自分を見て、またさりげなく嘲笑してやった。やはり所詮この程度なのか。電波に向けて言葉を乗せて、それだってもしかしたら全く何ともないものなのかもしれない。

朝っぱらから散らかっている(と言われる)部屋を片付けて、時間を潰して、そうしてやっと約束の時刻だった。いや、もうとっくに過ぎた。連絡もない。だからこうしてテレビ音声映像を垂れ流したままでいる。

その程度か。

と、逆恨みのように携帯に一瞥もくれてやることなく、2時間経った。音沙汰は無し。
既に雰囲気に哀愁が漂い始めた気がする自分だったが、さすがに今度は心配になってきた。もしかして何かあったのか、来られないような状態にあるのか。だから仕方なくメールでも、と確認をしようと携帯電話を手に取ったその時、ちょうど目に入ったのは、

「うわ」

約束の日にちは今日じゃなかった。

前にあいつが買ってきたマグカップで煎れたてのブラックコーヒーを飲む。シックに決めてやった部屋で、しっかりと存在を主張するかのようなオレンジ色は見事なまでに浮いていた。ついさっきまで自分をいらつかせるだけだった壁の時計も同色、言うまでもなく選んだのは俺でなくあいつだった。
そんなにオレンジが好きならソファーでも買って来てやろうか二人掛けの、なんて考えながら俺はまた愛しのギターを抱えた。




格好つけチキンなバンドマンみたいな



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