短編

□いびり
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「いじると楽しい」
「ざっけんな」
「ほら、な?」

大体何か俺は恨みを買うような迂濶な真似でもしたのだろうか。心当たりが完全に無いのだがそこは行き違いか。楽しくなどない。少なくとも俺はこうしていたぶられるのもいたぶるのも好きではない。

「ちょ、おまえやめろ阿保」
「なに切れてんのー」
「切れてねえ」
「切れてないの?」
「うん
………目がうぜえ!」
「ひどーい」
「もうどっかいけどっか」
「ひどーい」
「………うぜえ」
「ひ」「うぜえよ!」

何か。
他人の玩具にされるほど不愉快なことはないと思うのだが、しかし自身の意思は全く無視で、多いときなら週に幾度もそういった称号を授けられるのだった。しかも楽しいときた。つまり少なからず気にも入られているようだが嬉しくもなんともない。この手の人間には何を言ったところで無駄なのだ。だから俺は黙って耐えている、ほど大人でもない。

「教科書見せて」
「………は?」
「だっから教科書忘れたんだって」
「……ちょ、ついに俺」
「どうしたの?」
「幻聴か」
「違うし!ひどいなお前」
「何かいんのか」
「いるだろどう見ても」
「……気のせいか」
「おーい」
「……奢れよボケ」
「やっさし」
「うぜえ」

そして今は授業中だった。とりあえず学校は教育機関であり、勉学並びに道徳的な思想から理想的な生活態度まで様々を教師が生徒達に叩き込もうとする場所、というのが基本大前提であるのだが、全く気にすることのないこいつの暴挙は止まらない。むしろ日を追うごとに拍車がかかっていると感じるのもけして気のせいではない。
皆が小さい頃にお前はわざわざ学校に何をしに来ているのだ、と言われていた可能性の否定はしないが、物事には常に限度というものが付きまとっているのだとも思うのだ。つまりこいつはかわいそうな奴なのか。限度が見えなくなった上、故にこんな非常識的かつ勝手な行動に走ってしまっているのだから。

そうか。

「じゃあいいからさっさと俺をなぶれ」
「……え?」
「俺をなぶればいいだろ」
「いやいやいやいやねーしそんな第一言うだろアレほらアレよ」
「どれだ」
「アレ
サディストはサディストを弄ってこそのサディストってよ」
「サディストじゃねえ」
「だあかあら、そんなマゾっ娘をちくちくいじめたところで俺の欲は満たされないわけ」
「マゾじゃないし娘でもないふざけんな」
「はいはい」
「大体言わせてもらうがな、サディスティック性はわざわざちらつかせようとするものじゃないし、それとエゴイズムすなわちそいつの欲望のまま勝手に行動して他人に迷惑をかける行為に少なからず共通点が見受けられるのは認めてやってもいいがお前の場合はいくらなんでも」
「ごめんなさい」
「本当にそう思っているならどうすればいいかわかるな」
「はい」
「声が小さい返事が短いはい、分かりましたまたはいいえ、分かりませんまできちんと」
「はい、分かりました!」
「それでいい
早くしろ、この愚図」
「はい分かりました」
「分かっているなら今すぐ」
「何を」
「……何を?」
「何をすればよいのでしょうか」
「二分以内だわざわざ手間をかけさせるな」
「ごめんなさい」
「命が惜しかったら」
「分かりま……はい、分かりました今すぐ行ってきますすいません
おかね……いやなんでもありません」
「とっとと走れ!」


END



まあ、表裏一体だよねって話
最後はパシリです
楽しかった


2008/03/24

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