短編

□恋煩い
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君が好きで好きで堪らなくてただ二人が一人になるのを妨げる体など消えてしまえばいいと思った。例えば君のすべらかな頬だって腕だってなくなってしまうとしたら溶けてひとつになれるだろうか。触れられなくなることなんてたいした問題じゃない。僕は君になりたい。君が僕になればいい。

いくら声が掠れていてもその囁きを聞き逃すことはない。いつだって君のそれはひどく甘い。だけどそれが聞けなくなることなんてたいした問題じゃない。君は僕になる。僕が囁けば君の声になる。艶やかに軽やかに僕の耳に響く僕の声。君と早く一緒になりたい。

僕をわかってくれた。僕と愛を囁きあって、君の僕が僕になった。僕の君はずっと君のまま。その先は何なのか。きっと君が僕になればいい。僕と君は一緒になりたい。

どいつもこいつも腹が立つけれど、そんなこと全く気にならない。だって君がいる。僕がいる。鼓動がひとつになれたらどれだけの快感だろうか。少なくとも君は喜んだ。僕も嬉しかった。愛し愛されるのはこれほど幸せだった。君が笑うのがこれほど幸せだった。僕は君が好きなのだ。君はどうかな?

風をきった掌が頬をうった。君が笑わなかった。僕も笑えなかった。全てが麻痺した。頬だって痛くない。君が笑わなかった。


君などいなかった。



一応繋がってます、よ
その後の話です

2008/01/07


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