短編

□作品
1ページ/1ページ



誰も僕のことなんてわかってくれちゃいなかった。だけど僕はいた。わからないみんなの中にちゃんといた。
思いが伝わるなんて言われて嬉しくないのは僕。自分もそうなのかもしれない。でもそれなら君の方がおこがましい。僕は押し付けない押し付けられたくない押し付けられる。だって何もわからないわかれない。

君と違った。それこそ魅力を押し付けられた。僕は過敏になりすぎた。誰も救いようがなかった。それから僕も報われない。始めから妥当であるはずがなかった。今も。

僕が勝手に歩かされていた。いつの間にか知らなかった。不快でしかない僕を押し付けられた。僕でない僕がいくらでもいた。思い込まれた。思い込んだ。君を君を君を作ってしまった。望んでなどいないと僕の君が思ったけど僕の僕もそう言った。世界が広すぎた。

僕の君が君を傷つけた。僕は君の僕も傷つけた。誰も報われない。それなら壊してしまえばよかった。端から結果が見えていた。君が僕の君を僕が君の僕を粉々になるまで叩き崩してなめらかに再構築してやればいいだけだった。僕と君はそう望んだ。ひとつになればそれだけでいい。君はそんなこと望まなかった。誰も報われない。

例えば愛を囁きあったら君の中の僕は溶けて僕になるのかもしれない。君だってきちんと君になれるのだから悪いはずがなかった。君はいいよと言った。君が拒んだ。どうしたらいいのかわからなくなった。

世界が回る。僕は回らない。僕が回る。望んでなどいない。君だって回る。望んでなどいない。

望んだかもしれない。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ