四字熟語で20のお題
□2.証拠隠滅
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御剣が僕に隠し事をしていると、そう悟ったのは水曜日のランチの時間。
たまたま検事局に用事が有って、それが昼までかかってしまったから御剣を誘いに来たのだけれど。
肝心の御剣は執務室にいなかった。
不在になっている掛札に肩を落として事務所に帰ろうかと思った僕の後ろから聞きなれた声がしたんだ。
「成歩堂?どうしたのだこのようなところで」
嬉しさ溢れて振り返った僕だったけれど、御剣の顔色はあまり良くなくて一気に心配になる。
「どうしたのは僕の台詞だよ。具合悪いの?顔色悪いけど…」
心配して手を伸ばした僕を、御剣は『大丈夫だ』というたった一言だけで制した。
ランチに誘いに来たという僕に御剣は今日は忙しくて時間が作れないと申し訳なさそうに微笑む。
いつもはそれで終わりだった僕らの会話は、一つのきっかけで終わらなくなってしまった。
『じゃあまた今度』とすれ違うときに見えた御剣の首筋のあざ。
クラバットで隠したつもりだったんだろうけど隠しきれていないそれが僕の視界をスローモーションで横切っていく。
それと共に流れてきた覚えのある香り。
事はほんの少し前に起こったのだと僕に分からせるように残されたその香りが僕の足を執務室へと戻した。
閉めかけた扉を急に開かれた御剣はそれは驚いた様子で振り返ったけれど、関係ない。
その良く知った身体を、手近にあったソファに沈める。
「今まで、何処に行ってたの?」
僕の問い掛けに状況が全くつかめていない御剣はただ困惑の色を浮かべて僕を見つめ返した。
そしてゆっくりと口を開く。