四字熟語で20のお題

□4.兼愛無私
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警察局長 巌徒海慈
局長の座に君臨するも人当たり良く、頭のキレる実力者。

それが一般的に見た姿である。


しかし一歩踏み込むと、計り知れない深さを持つ、未知の人物。
そう表現したほうが正しいだろう。

その垣間見せる顔を知るものは上層部でも数少なく、御剣と成歩堂はそれを知る一握りの部類に入る。


「知ってる?ナルホドちゃん」

「何が…ですか…?」


警察局に用があって顔を出した成歩堂だったが肝心の糸鋸の姿は見えず、代わりにとんでもない人物につかまってしまった。

挨拶だけして脇をすり抜けようとしたその腕をしっかり掴まれて、つれてこられたのは会議室。

何か話があるのかと思いきや、目の前には飲み物と成歩堂の好きな菓子が並べられてしまった。


「(これはつまり…お茶をしながら世間話…ってところかな…帰りたいのに…)」

「あのね、人間はヒトリでは生きられないんだってさ」

「…はぁ。良く聞きますね」

「でね、ボクは考えた。じゃあボクは誰と生きているのかな〜ってサ」

「…えぇ」


楽しそうに話すその大きな人物の前でいつも以上に小さくなってしまった成歩堂が紅茶を口に含む。

御剣に出されるものとはまた違った香りだが、知識のない成歩堂でもそれがある程度高価なものであることは分かった。


「…聞いてる?ナルホドちゃん!」

「−ッ!あわわわ…ゴメンナサイ!」


すっかり紅茶の香りに酔いしれ、そこから御剣の顔を連想していたなんてとても言えない。
手にしていたカップを置き慌てて視線を合わせると、巌徒は満足そうに微笑んだ。
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