○ 上層駄文2

□夜中の目覚め
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「ム…う…」


一体今は何時だろうか。
私は頬の痒みで目が覚めた。
隣ではぐっすりと眠る成歩堂。
決して広くはないベッドで寄り添うように寝ていたのだが、この痒みは何だろうか。

成歩堂を起こさないようにそっと洗面所に向かう。
電気のスイッチをつけると痛いほどの光が視界に飛び込んできた。


「ム…これは…虫刺されか…」


ぷっくりと赤くなった頬は、明らかに蚊に刺された様子。

まだいるのか…と思いながらも、私は薬が何処にあるのか分からない。
寧ろ、虫刺されの薬がこの家に存在するのかも知らない。

以前見た成歩堂の救急箱には確か大きな風邪薬の瓶が入っていたくらいだったはずだ。


「…痒い」


自分で言うのもなんだが私は目覚めの機嫌がすこぶる悪い。

私の頬を刺した蚊が憎くて仕方が無いが、あのような小さな生き物が何処にいるのか探すのさえ面倒である。
そして電気をつければ成歩堂は起きてしまうだろう。


「痒い…のだよ」


誰に話しかけるでもなく呟きながら私は電気を消すと寝室に戻った。

蚊取り線香などあるわけがないし薬もない以上、今の私がすべき事は睡眠を取ることだ。

そっとベッドに潜り込む。
寝返りを打った成歩堂が私にしがみつくようにくっついてきて可愛いが、寝ずらい事この上ない。

それでも何とか終身の体制を取り戻し、静かに目を閉じる。

眠ってしまえば大丈夫だ。

起きたときには痒みも引いているだろう。


そんな私をあざ笑うかのように事は起こった。
それは私がようやく二度目の眠りに落ちようとした瞬間。
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