○ 上層駄文2

□逆転の香水
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ふわっと漂う香り。

検察庁 上級検事執務室
1202号。

通いなれたその扉を開いていつも感じるのは、御剣の部屋の香り。
しつこくないさわやかな、それで居て深い香りが訪れた成歩堂を包み込む。

成歩堂はその香りが好きだった。

いつも一緒に過ごす時、御剣からもこの香りがする。
恐らく御剣が身につけている香水なのだろうと思う。

匂いとは面白いもので、人はその香りに出会ったとき、つけている人を思い出すものだ。

成歩堂に至っては、街角で同じ香りを見つけるたびに御剣の名前を呼んで振り返っていた。


「どうしたのだ。部屋に入るなり立ち尽くして。いつものキミなら即座に腰掛けるであろうに」


書類から目を離す事無く掛けられた声に成歩堂は我に返る。
仕事で来た事を思い出し、手元から書類を差し出す。


「これ、明日の法廷の資料なんだけど。…その」

「何か情報ないかなと言ったところか」

「…やっぱりばれちゃったか」

「まったく。事件の情報を検事に聞きに来るとは…。随分神経の太い弁護士だな」

「あはは…うぅ…」

「待っていたまえ」


すっと立ち上がった御剣の起こした空気の流れに乗って、その香りがダイレクトに成歩堂に届いた。

酔いしれるようにその香りに微笑んだ成歩堂に御剣が気付く。


「何をにやけているのだ」

「え?あれ?僕にやけてた?」

「思い切り…。これが資料だ。核心に迫る部分は流石に見せる事は出来ないが、ヒントにはなるだろう。私が担当検事ではなくて良かったな」

「毎回こうだといいんだけど…」
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