○ 上層駄文2
□そのままのキミ
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「御剣、百円貸して?」
「断る」
「な、何でだよ!いいじゃないか百円くらい!ケチっ!」
「ケチではない!ではキミにハッキリと言おう。今日私たちがここに立ち寄ってから早いもので23分と41秒がたった」
「秒まで見てたのかよ…」
「その間にキミが使用した金額はキミの全財産である2300円である」
「うっ…」
「つまりキミは1分に百円のペースで浪費しているのだ!これを許すわけには行かない!しかも全財産だけでは足りず、私から借金までして浪費するとは何事だ!」
「だって…」
夕方、成歩堂の部屋で過ごしていたときに聞こえてきた祭囃子。
それにつられる様に二人で部屋を出て足を運んでみたものの、入口にあった金魚すくいで成歩堂は動かなくなってしまった。
先ほども述べたようにここに来てから1回百円の金魚すくいに23回チャレンジし、ものの見事に惨敗中である。
しかしこのようなアレは、掬えなくとも何回か挑戦するとおまけで1匹くらいくれるものなのだ。
よって私の手元には今、数匹の金魚がいる。
しかし成歩堂は一向に満足しない様子で必死に金魚を追い回している。
「何をそんなにムキになっているのだ。こうして金魚も貰ったのだし、もういいではないか」
「良くない!良くないんだよ!だから百円貸して?」
「……これが、最後だぞ?」
「わかった。約束する」
私は財布の中から銀の硬貨を1枚取り出し、成歩堂に手渡した。
それを店の主に渡して、見慣れた道具を受け取る。
もなかで出来た一見頑丈そうなソレだが意外にも脆いもので、既に金魚の居る中には成歩堂の惨敗記録であるもなかが漂い金魚のえさとなっている。