○ 上層駄文2
□素顔のままで
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「御剣は偉いよな」
唐突に言われた言葉の意味が理解できなくて、御剣はきょとんとした瞳を成歩堂に向ける。
褒められるような事をした覚えはないし、おだてた所で何かプレゼントするような御剣ではない事は成歩堂も分かっているはずだ。
だからこそ、きょとんとするしかなかった。
「…なんだ、唐突に」
「うん。今まで本当に頑張ってきたなって、そう思ったんだよ」
「…何が目的だね?」
「嫌だなぁ。警戒しないでよ」
「キミがおかしな事を言い出すからではないか」
さっきまでのあっけにとられたような瞳は何処へやら。
すっかり警戒心丸出しの視線を向ける御剣に、成歩堂は思わず苦笑いをして会話を続ける。
「あのDL6号といい、SL9号といい、御剣は一人で苦しんで、一人で乗り越えたんだ。今改めてそう思っただけだよ」
「それは違う。私一人では何も出来なかった。今までがそうだった様に…」
「確かに僕は弁護をしたけれど、御剣が頑張ってくれたから真実が分かったんだ」
「……気味が悪い。どうしたのだ急に。頭でも打ったのか?」
本気で心配し始めた御剣に、成歩堂はトドメを刺すべく立ち上がる。
身構えた御剣を今までに無いくらい優しく抱きしめて、その柔らかい髪を暫く撫でてから耳元で囁く。
「よく、頑張ったね。偉いよ御剣は」
「……成歩堂」
「もう、一人で苦しまないで。これからは僕が一緒にいるから。一緒に苦しんで、一緒に乗り越えよう?」