(S)N-SEIGAKU
□愛するなら、本の中で
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「ね、不二。ここ分かんにゃい」
「ん…どれ?あぁ、ここはね…」
図書室の隅から聞こえる英二先輩と不二先輩の声。
あぁ、ここから出たい。
むかつく。
【愛するなら、本の中で】
先程まで太陽は、高い所にあったはずなのに。
今では濃いオレンジ色に光って下校している生徒達を照らしている。
ここ、青春学園中等部の図書室はいつもは人が少なく、日当たりもいい、図書当番の時の絶好の昼寝場所なのだけれど。
ほんとに、むかつくんだけど。
返却場所のカウンターに座りながら、リョーマは思った。当番だからここから出てはいけない、分かってるけど。
邪魔なんだよ、英二先輩。
ここから英二先輩と不二先輩が勉強しているのがよく見えるのだ。
それは30分前のこと。
* * *
「おちび!ちょっと失礼するねんー!」
「英二、静かにしなきゃ駄目だよ」
「…どしたんすか」
「英二の勉強見てあげようと思ってね」
* * *
不二先輩が図書室に入って来た時は、ドキッとして、凄く嬉しかったのに。
英二先輩も、いるのか。
体がもやもやしてしょうがない。
二人を引き離したくて。
触れないで、不二先輩に触れるなよ。