(S)N-SEIGAKU
□RAIN
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僕の部屋の窓に、雨の粒が果てしなくぶつかってくる。
いつもは憂鬱でしょうがない雨の日。
湿気で僕のサボテンは元気がなくなるし、僕も水を吸ったアスファルトの匂いで気分が落ち込む。
でも、今日は隣に君がいる。
隣に、君が。
【RAIN】
「ねぇ、リョーマ?」
先程から窓の外を見て動かないリョーマに、声をかける。
「ファンタ、飲む?」
僕なんかに見向きもしないで、一点を見つめるリョーマ。
「花、可哀相」
え?とリョーマの隣に座り、一緒に外を見てみる。
「可哀相っす、あの花」
「あぁ、スミレだね」
そこには小さなスミレが一つ、咲いていた。
雨に打たれるスミレは庭の端っこで首を傾げていた。
「……なんか、僕みたいだな」
ふふ、と笑いながら言ってみる。
「何が?」
「あの、スミレ」
「何で寂しそうなスミレが周助なの」
納得出来ないとばかりの顔でリョーマは僕を見上げる。
本当に似ているのだ。あのスミレに。
「寂しそうなんかじゃないよ?最近雨が降らなかったから、喜んで雨を受けている。そして、その雨はリョーマなんだ」
「雨が…俺?」
うん、と僕は頷くと、リョーマの髪に指を通す。
「植物の喜びの元は水。そして、僕の喜びの元はリョーマだからね。
全ての源は水。
僕の全てはリョーマ。
だから、リョーマは雨なんだよ?」
スミレからリョーマに視線を落とすと、真っ赤な顔をしたリョーマがいた。
「あんた、馬鹿じゃないの」
「うん。僕はリョーマ馬鹿だからね」
クスクスと笑いながらリョーマを膝の上に抱き上げると、リョーマの体温が僕に伝わる。
ちゅ、と髪にキスを落とす。
愛しい。凄く。
もっとリョーマと一緒にいたかったのだけれど、リョーマは僕の手を退けてスタンと立ち上がった。
「俺も、周助馬鹿かもしれない」
タタタ、と階段を降りていってしまった。
まさかと思い、窓を開けて下を見てみる。
やっぱり。
スミレの上に傘を掲げているリョーマがいた。
くるり、とリョーマは振り向くと僕と目が合った。
「ひとりぼっちは、寂しいじゃないっすか」
あぁ、何でこんなに可愛いのだろう。
僕はタオルを持って、リョーマの後を追いかけた。
雨は、嫌い。
テニスが出来ないから。
でも、周助が
雨を俺だと思うのなら、
毎日が雨でもいいって思う。
そうすれば、毎日一緒に居られるような気がするから。
FIN
→おまけ/後書き