N-(G)宝物/捧げ物

□毒
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甘いんだ。
 
怖いくらいに。
 
 
【毒】
 
 
いつからだっただろうか。
君の綺麗な黒髪を目で追い掛けるようになったのは。 
 
 
闘志を含む目をして、右の口角をくいっと上げて僕を見上げる。
 
 
いつからだっただろうか。
君のその小さなふっくらした唇から、「好き」と言ってほしいと願い始めたのは。
 
 
嗚呼、君が美しい花だとしたら
 
僕は蜜を求めて飛びかう蝶だろう。
 
 
 
 
「ね、越前」
 
部活が終わり、窓から赤い夕日の光が反射しはじめた頃。
 
僕は着替え始めた越前に声をかけた。
 
 
甘い蜜を、吸いたくて。
 
 
「…なんすか?」
 
部活のポロシャツを脱ぎ、越前は壁に寄り掛かかった。
 
冷たい、コンクリートの壁。
 
なんとなく、心が淋しくなる。
 
 
わかっていたんだ。
これからも越前との関係は“先輩と後輩”であり続けることを。
 
 
でも、それでも僕は、
美しい花を近くで見てみたかった。
 
 
「越前って、綺麗な花みたいだよね」
 
「は?」
 
眉間にしわを寄せながら、苦笑して君は答えた。
 
「…まぁ、そうかもしれないっすね」
 
 
少しだけ開いた部室のドアから、痛いくらいの冷たい風が吹いてくる。
 
 
 
「美しい花には、毒があるんすよ」
 
 
 
「…君は、残酷だ」
 
 
いつだって君は唯我独尊。 
三白眼で僕を見つめ、
生意気な笑顔をこちらに向ける。
 
 
そんな美しい花…―怖いくらい美味しい蜜に、僕は溺れていった蝶。
 
 
「先輩も、残酷じゃん」
 
―…俺の毒に喰われた犠牲者でしょう?
 
 
 
嗚呼、何故こんなに。
僕は馬鹿なのだろうか。
 
 
 
「ふふ…、これからもその毒は僕の身体を掻き回すのだろうね」
 
 
 
君を想いすぎて、胸が痛い。
 
君の蜜が、すごく甘くて。 
 
 
僕は蜜に足を取られた、惨めな蝶だ。
 
FIN
20071225水輝侑菜様へ 日月より
 
No Touch ACE☆様の水輝侑菜様への捧げます。こんな悲恋で申し訳ありません…
悲恋好きなんですが、なんか自分が書くと全然イメージと違ってしまいます(苦笑)
リクエストしていただいてありがとうこざいました!
 

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