「まっさひろ-っ!!」
勢いよく部屋の妻戸を開けてみると昌浩はまだ寝ていた。
ちなみに物の怪のもっくんも。
「2人(?)とも起きてよ-っ」
「ぎゃっ!?」
もっくんの鼻を弾くと、すっとんきょうな声を上げた。
「お前なぁ…」
鼻を押さえると恨めしげに睨み付けてくるもっくんは置いといて。
「昌浩ってばあっ!!」
「う…、ん…」
身体を揺するが、寝返りを打っただけだった。
コノヤロウ。
「今日陰陽寮休みなんでしょ!?」
「だからこそ、ゆっくり寝かすものなんじゃないのか」
ぼそっと呟く物の怪を睨んで黙らせると、再び身体を揺する。
「市行こうよ-っ」
「わわっ…、ふぁ…市ぃ…?」
あまりの揺れに、昌浩は目を覚ますとむく…と起き上がる。
欠伸をしながら寝ぼけ眼で見つめてくる昌浩に、ウキウキと説明する。
「露木様からおつかいを頼まれたの」
「おつかい?…天一とか連れてけば…ふぁ…」
「やだっ」
「だってまだ朝早い…━━」
「昌浩がいいのっ!!」
「…!!」
ぱちくり。
昌浩が余りの大声に瞬きを繰り返す。
物の怪は、ほう…と尻尾をひとふり。
「分かったら、さっさと支度して朝食食べてっ!!」
「…は、い…」
それだけ言い残すと、ずかずかと部屋を去っていく。
妻戸が閉まると、昌浩はがくっと俯いた。
くくっていない髪が流れ落ちる。
物の怪は昌浩の肩をぽふっと叩いた。
「まぁまぁ、もう諦めてさっさと支度するんだな…、…おや?」
「……」
近付いてみると、昌浩の異変に気付く。
「まんざらでもないってか」
「もっくん、うるさい」
顔をほんのり赤くした昌浩が、物の怪の頭を鷲掴みにする。
「そりゃ、誰だって嬉しくなるわな。あんなこと言われたら」
━━昌浩がいいのっ!!
「〜〜っ、うるさいっ」
「うぎゃっ」
ていっと部屋を強制退場させられた物の怪は、乱暴をしまる妻戸を見上げ一息つく。
ふと、空を見上げた。
「いい天気だなぁ…」
雲ひとつない青空が広がっていた。
最強目覚まし
(眠気も恋には敵わない)
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