〜小話〜

□束の間の休息
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道すがら立ちつくす神将が一人。

ここ京の都は碁盤の目になっていて見渡しがよい。

なのに。

「ちっ」

―――このままでは眉間の皺が消えなくなるぞ。

よくそんなことを言われてからかわれているが、誰のせいだと思っている。

心の中で彼は静かにそう毒づいた。

彼が苛ついている理由は、至って簡単。

先程まですぐ後ろを歩いていたはずの主が忽然と姿を消したからだ。

「この分かり易い道で、どこに隠れるというのだ」

すでに何度目かわからない溜息が漏れる。

「………はぁ……」

先程よりさらに深く眉間に皺を寄せ、彼は歩き出した。

この僅かな間ではそう遠くまでは行くまい。

そう考え、適当に当たりを付けて近くの廃屋へと足を踏み入れた。

まず手近な邸に入って周りを見渡す。

「いない、か」

二件目。同じように周りを見渡すが、目的の人物はどこにもいない。

さらに苛立ちが募り、このまま異界へ帰ろうか。そんな考えさえ脳裏をよぎる。

しかし放っておくわけにはいかない。

お気に入りらしい小さな子供を連れて依頼をこなした帰り道。

あれももう年だ。少なからず疲れているだろう。

なればこそ早く邸に連れ帰って休ませたかったのだが。

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