Black
□OUT
1ページ/4ページ
僕は2年前に、美国本社に就職した役員だ。巨大な会社だが、いつも社長の身を完璧に守る2人のSPがいた。米良さんと香織さんだ。
ガウン――
バンッ――
訓練所に響く銃声。同時に聞こえる銃声は彼らのもの。5発撃ったが、2人とも穴はそれぞれ一つだけ。
ホールインワンだ。
「すごい…米良さんと香織さん!」
「な〜に、大したことないって。」
「訓練を積めばできるようになるよ、大塚君。」
大したことありますよ!熟練でもできる人の方が珍しいって!すごいな…。感動する僕を尻目にいつものお決まりのやり取りが行われた。
「でも香織の方が得意じゃない?」
「米良の方が腕が立つだろう。」
「そうかなぁ。」
「そうだよ。」
なぜかそれで納得して見つめ合い、にっこり笑った。……本当に仲いいな。
――−―
お昼休み
社食に行くといつもの席に2人が座って昼食をとっていた。出勤、仕事、昼食、退社…何から何まで2人はずっと一緒なんだよな。同棲だから当たり前か。ぼんやりと考えながら、プレートを持って先輩たちの前に座る。
「大塚くん、俺と同じのだね。」
「米良さんもですか?このオムレツがおいしんですよね!」
「そうなのか、米良…?」
どういうわけか、神妙な面持ちで米良さんを睨む香織さん。俺何かしたかな!?
「味見してみる?香織。」
「うん。」
「はい、あーん♪」
「あーん。」
ぱく。
え…?今何が起こりました……?ベタベタな恋人たちを見たような気がする。
黙ったままの俺にお構いなしに続けられる。
「まぁまぁかな?」
「おいしいけど、香織の作るオムレツには適わないよねv」
「じゃあ…今夜も作ろうか。」
「やったね!そうだ。香織、そっちの空揚げ一つちょうだいv」
「仕方ないな。ほら、あーん。」
「あーん♪」
おいしいねv――っとまた2人で言い合い見つめて微笑む。これは…カップルの会話では!?
何も言えず、反応もできずにいた。はっと我に返り、慌てて残りの昼食をかっこんだ。
「あ…午後から香織さんたちと仕事だった。」
どんな顔して会えばよいのやら。
.