小説

□水鏡
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僕は、臆病だ。だから・・・君が必要なのかもしれない。








『水鏡』









先程まで、赤い花が生けてあった花瓶は床の上に落ちている。赤い花びらがグシャリと潰れているのを見て、綺麗だと思う僕は狂っているだろう。
残念ながら潰れた花と粉々に砕けた花瓶に興味はなく、全て撥ね除ける。興味があるのは鏡。ただのガラス、どこにでもあるような鏡、何でも良いのだけど・・・それじゃあ、僕の片割れに会えない。
「ねぇ、ハレルヤ」
『・・・』
割れない鏡は、床に広がっている水。その鏡の奥にいるのは、僕ではない・・・彼。
『・・・七回目だな』
「ハレルヤは律儀だね。そうだね。今月に入って、やっと七回目だ」
『辛い・・・のか?』
うん、辛いよ・・・そう言うと、君は困ったように眉を潜める。








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