treasure

□飴と飴
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右腕に某有名ドーナツ屋の箱とアイスクリーム屋の箱、左腕に高級スイーツ店のケーキ箱と老舗和菓子屋の饅頭詰め合わせ。等々数え切れぬ程の袋をぶら提げて、目の前を飄々と行く創一を見遣る。

今は、賭郎勝負の立ち会いが本日未だに無い撻器と判事の眼から解放された創一の、束の間の休憩時間。彼等は羽根伸ばしにと昼の街へ繰り出していた。最初は昼食程度のつもりだったのだが、いつの間にか買い物へ発展していった。

あれが欲しい、これが欲しい、ついでにあれとこれとそれも欲しい。普段厳しい判事に見張られている反動か元々の欲しがり癖か、目に付く興味を惹かれる物を手当たり次第に物を買っていく創一。

否、実際に支払いをするのは撻器のポケットマネーで、創一自身は一銭も出してはいない。傍から見れば何の罰ゲームだという光景ではあるが、創一が止まらない主たる原因は撻器にあったのだ。

とある万年筆屋での事、

「ほら、創一。この間欲しがっていたのはこれだろう?」

「うん……あ、でも、こっちのデザインも良いかも…」

「なら両方買えばいい。充分に比べてから気に入った方を使えばいいじゃないか」

万年筆を二本。付属品も付け足して一般人が真っ青になる
額を独特な笑い声を零しながら支払う。

とある時計屋での事、

「この前くれた時計、ネジが取れたから新しいの欲しいんだよね」

「まぁた投げたな創一」

「だってアラームうるさいから」

「仕方ない、今度は音の静かなやつを買ってやろう。予備も含めて三つでいいか」

一つで充分な所、余分に時計を購入。アラーム機能の無いその置き時計は、目覚まし用という本来の目的から大幅にずれていた。

とある会員制洋服店での事、

「ねぇ、服は別に要らない」

「そうつまらない事を言うな。お前に散々付き合わされたんだから、お前も少しは付き合え」

「変な服ばかり着せるから嫌なんだよ。あと着替えが面倒臭い」

「お前に似合う物しか選んでいないがな。…先ずはこの辺からか、」

「迷わず女物を見るのやめてよ」

「冗談だ冗談!」

一頻り撻器コーディネートの創一着せ替えが済んだ所で試着させた内の数十着を購入。基本スーツの創一にはあまり嬉しい物ではないようだが、撻器は無視である。

こうして創一が欲しがる以上に撻器から買い与えるせいで、太陽が傾いて帰る頃には漫画のような大量の荷物が両腕を占領していた。



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