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□阿伏兎受け
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(かむあぶ)





単独任務で右腕を落っことして帰ってきたアホな上司に呆れ以外の感情を持てなかった忠誠心のない部下がここにいまーす。夜中の2時にそれを出迎えた俺はもう、馬鹿じゃねーの団長しかそのアホ上司に言えなかったし、アホ上司はアホ上司でヘラヘラしながら左手でそれに照れたように後頭部をポリポリ掻いた。アホだ。アホの極みだ。笑う気力もないまま馬鹿にするだけ馬鹿にしたあとにとてつもない空漠感が俺を襲って俺は泣きそうになった。お前まで片腕になってんなよなあと涙を零したくないのとその顔をアホ上司に見られたくない一心で空を仰ぎ、その上に右手で額と目の中間辺りを押さえた。お揃いだねとか脳天気なアホ上司が脳天気に言うから殺意が沸く。ちょっと気分を落ち着かせてどこで無くしてきたの、と問えば今頃は海でバクテリア達の餌になってるかなあとの返答があった。どんな任務をしてきたのだ。アホ上司が向かったどこかの惑星に俺も強引に押しかけるべきだった。上の尻拭いをさせられるのはいつも下だ。アホがアホな行動をとってアホな結果を招かないように、しっかり手綱を握って、近くで監督してやるべきだったのだ。・・・たまに俺は俺が奴の上司をやったほうがいいのでは、という気になる。我ながら涙ぐましい母せ、じゃなくて父性だと思う。
右腕なくしてどーすんの、とアホの行ってきた惑星に俺も今から行こうかという案を頭に思い浮かべながら尋ねる。海のある惑星の、その海を浚って沈んでいるという右腕を探してきたいとの願望、欲求。魚や微生物につつかすには勿体ない。アホ上司の腕だ。どうせなら部下として元の主に返すのはどうだ、という妙案。嘘。
それを掃うようにアホ上司が俺の肘を掴んでいた。こっちを向けよと言われ薄い忠誠心のままそれに従う。
笑ってんなよアホ上司。

「俺の右腕はお前だろ。お前が居ればいいよ」

笑ってんなよアホ上司!
確かに俺は周りから第七師団団長の右腕と呼ばれるような男だがそういうことじゃないだろ!、と言ってて何故気づいてくれないのか。お前の肉体の右腕は何があろうとお前のものでありお前にとっては俺よりもそっちの右腕のほうがいいのだ。何故なら俺は俺のものだからお前のものにはなれないんだ、と何度目かの説明を何度言っても理解しないアホ上司に説いた。お前が俺のものになればいいんだ、とアホ上司はまたいつもと同じ答えを寄越しやがった。言葉通り右腕として、左腕のない俺が奴の右側に居れば俺達は手を繋ぐこともできない。たかがそんな関係だっていうのに。
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